赤穂浪士

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作品概要
制作会社 東映
公開年度 1961年
内蔵助役 片岡千恵蔵
評価 5ツ星
役者絵:大川橋蔵
役者絵:片岡千恵蔵
役者絵:市川歌右衛門

 先年の「赤穂浪士 天の巻・地の巻」(と「忠臣蔵 桜花の巻 菊花の巻」)のイイトコ取りのやきなおしだが、それが傑作に仕上がった大作。WEB上で見かけるファンには前作の落ち着いたかんじがイイという人もいるが、陰と陽に分けられるほどに、かなり「別物」。(監督は前作のほうが満足しているらしい(出典:「松田定次の東映時代劇」)


 同じ原作で同じ松田定次監督。堀田隼人の大友柳太朗や吉良上野介の月形龍之介は続投だし、制作意図は?って最初思ったんですが、せっかくのいいネタだし、東映のスタイルが確立したし、創立10周年だからパワーアップしてもう一回やろうよ!というノリだったのかなんなのか、ひじょうに華やかなエンターテインメントに進化している。(※註01)

 ビジュアル的に必要な部分にちゃんと金がかかってて豪華だし、日本語がわからない人が見ても楽しいんじゃないだろうか。ていうか逆に、本作品は日本語がわかってても忠臣蔵にビギナーだとキツイ。この作品はかなり「忠臣蔵」が頭に入ってるヒト用に構成されている。そして滑舌の悪い俳優が意外に多いしw。

 林家木久扇師匠がよく「フルスロットルの片岡千恵蔵や大河内伝次郎はなにをしゃべってるのかよくわかんない」って言うがほんとうで、こういうとき東映のDVDも字幕が出ればいいのになあと思う。(※註02)

 また、人物プロフィールや相関関係、&かかるエピソードがセリフのみ(早口で)でサラリと処理され、これが、原作の小説にないアレンジときてるから気が抜けない。(例:堀田隼人と一緒にいるのが陣十郎ではなく誰で、その人が堀田隼人とどういう因縁で、また堀田は堀田で大石家とどういう関係かとか、内蔵助と兵部がもともと昔どういう仲で、どういうハナシをしたかが現在どう関わっているかなど、こみいってる。どういうわけか、みんながいろいろ縁続き。このアレンジはプロデューサーの要望に脚本の小国英雄が応えたものらしい?(出典:松田定次の東映時代劇)。)


 わかりにくいとはいえ、かけあいはよく練られていて、あとからアレコレ思い起こされる印象深いセリフが多い。

 脚本以外も音楽、演出、撮影、編集、美術、衣裳など映像素人が見ても随所に「必要」な作業が申し分なくなされており、プロの映画人の仕事という感じ。

 「映画で忠臣蔵」と言ったときはこの作品のビジュアルが思い浮かぶ。そんな決定版っぽさがある。


 とにかく出てくる俳優陣がどなたも素敵。若い人が見ると、初めのうちは片岡千恵蔵と市川歌右衛門の区別が難儀だろうが(あろうことかあるまいことか私は数年間も萬屋錦之介の脇坂淡路守と中村賀津雄の畳屋を錦之介の二役と見紛うておりました。)、とにかく、適材適所の配役が「キャラクター大合戦フェスティバル」という感じでまとまっており甚だ楽しい。看板役者をうんと引き立てて、見せ場をいっぱい楽しめる。大川橋蔵を超える和事系の内匠頭っているんだろうか?


 ちなみにタイトルは赤穂浪士だが、浪士そのものはゲンゴ安兵衛のみしかスポットライトが当たっていない(あえて言うなら、あとは主税)。


 とにかく、近年の忠臣蔵ではあまり物語作りの上で重要視されない(現代人に伝わりにくい)主君と家臣たち(義士たち)の関係性がよく描かれており、彼らのいじらしさやかいがいしさが、ラストの「討ち入り」に、いい振り幅で反映されている。そもそも本作の登場人物は喜怒哀楽がはっきりし、とてもよく喋り、どのキャラも「人間っぽい」演出がなされている。なので映像は絢爛だが歌舞伎よりも浪花節に籍の近いぬくもりを感じる。

 よく喋る一方で一つも台詞のない「ため」=要所要所の「腹芸」も見事!田村邸などは涙が止まらない。立花左近も良い。

 特に内蔵助千坂がばったり出くわす旅籠のシーンは屈指で、ただ突っ立ってるだけなのにそこに魂と魂の壮絶な讃え合い〜探りあい〜殴り合いと慰め合いが無言のうちにとりおこなわれ、凄い。


 DVDで何度か見ていて中身は知っていたが、新宿の映画館で「東映時代劇まつり」をやった際にスクリーンでも見たが、ずいぶん印象が違った。このころの脂の乗った日本映画は、やはり大画面にかぎりますね。すみずみまで行き届いた色彩構成が見事なのだ。おうちで見るなら30インチ以上のモニターを推奨するものであります。

 DVDのでは気づかなかったんだけど、どう見てもチャンバラトリオの頭(かしら:南方英二)っていう感じのヒトが出てたんで、帰宅してタイトルロールだけ確認したら出てました〜!!当時は芸人さんではなく錦之介さんの付き人やってらしたんですね。


 当時の差し歯の材質の限界が、萬屋錦之介の前歯に見て取れる。


註01…

当時の東映(時代劇イケイケ)は似たようなキャストで何度か同じタイトルをリメイク(シリーズとは別)することがあったようであります。(「水戸黄門」1957年版があって3年後もまた作るなど)

ただ、当時を生きた人としては「またかよ!」感が強かったらしく、当時の「キネマ旬報」で飯田心美という人が「退屈感を抑えきれない」「2年足らずのうちにまた作られた(略)なにか新考案がなかったものか」と手厳しい批評を残しているそうだ(要確認)。


註02…

近年(2018年…本コーナーを最初に設けて約10年後)のCS放送では、たいがい字幕が入るようになりました。また市販のDVDより高いクオリティの映像で作品を楽しめます。

字幕であらためて観てみると、見るたびに再発見がある。