ドラマスペシャル忠臣蔵〜その男、大石内蔵助
作品概要 | |
制作会社 | テレビ朝日 |
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公開年度 | 2010年 |
内蔵助役 | 田村正和 |
評価 |
とにかく、テレビ朝日、エライ。
新作を放送したことはもう、ファンとしては無上の喜び。
しかし、びっくりするくらいパッとしない「安全運転な」作品。全行程を時速30キロで進んでるかんじ。
新しい忠臣蔵ファンをゲットしようとかそういう製作側の意欲はまったく感じず、極力お茶の間の時代劇ファンを刺激しないように作ったといった感じに、無難&無味無臭に仕上がっている。淡々としてて痛快さにも面白味にも欠ける。
自分が忠臣蔵ビギナーだったら、一体なぜ「忠臣蔵」がこれほど長い間もてはやされてるのかは、本作品からは見つけられなかったと思う。
かといってスタッフ&キャストの姿勢は決していいかげんではなく全体が丁寧な作りで、なんというか年を取ったベテラン先生の公民の授業とでも言おうか、「ちゃんとしてる」のが唯一の取り柄?
冠に「その男」と強調までして名前が出ているわりに大石内蔵助像にも特別な演出も解釈も無く、「演じているのが田村正和」という以外、なんにも特徴が無い人物に仕上がっている。
「音無の剣」にもそういう雰囲気が漂っていたが、田村正和を出すということは、あくまでそれがメインであり、彼を目立たせるために他のあらゆるテンションを「彼以下にする」という取り決めにでもなっているのだろうか。田村のテンションは徹底的に起伏が無く、さしずめ堀田隼人が年をとった風。(註01)
吉良上野介を演じているのは西田敏行なのだが、彼は「悪役・吉良」をイイ感じにふくらませている。
ちょっと元も子もないことを言ってしまうと、高家筆頭の気品はむしろ田村正和に感じ、気骨で本心が見えない田舎侍こそ西田敏行がピッタリに思える。
そもそも、どうしてこの人物がこの役者なのか、と言ったこだわりがすべての配役に見られない。
個人的に「堀部安兵衛(NHK)」の続きが見たかった私には安兵衛に小澤征悦を当ててくれたのもうれしい(註02)(だから「こだわりがすべての配役に見られない」は言い過ぎ御免。北大路欣也の立花左近との「二世どうしの東下り」などは、スクショで見れば感動モノだ)。で、ギリギリ星ふたつ。
しっかし近年の忠臣蔵には、この歴史あるエンターテインメントを遊ぼうというセンスが徹底的に欠けている。スタッフさんには講談や浪曲、人形浄瑠璃や歌舞伎、または1950年代の映画を見直してほしい。部分を抜粋しながらトレースして並べるんじゃなく、過去の名作が「どういうコトをしようとしていたのか」「なぜウケていていたのか」を見直して欲しい。
註01(附言)…2021年5月、田村正和さんの訃報を受けて、生前のいろんなエピソードがネットニュースで紹介されているのをアレコレ読むと、ともかく田村氏に対する周囲の気遣いは絶大で、作品どうこうもさることながら、彼を取り巻く界隈ではともかく田村氏を引き立てるための気遣いが大変だったらしいのがわかる。それがこの作品にどう影響しているのかはわからないが。
ただ、本作に対して正和さんは「オヤジ(9歳で死別)、見ていてくれ」という意気込みだったと、放送当時インタビューした関龍市朗氏が語っている。(中日スポーツ)
註02…この小澤さんの場合や、他の作品でも中村橋之助の上杉綱憲、中村錦之助の脇坂淡路守、石坂浩二の柳沢吉保、小松方正の丑五郎といった何作かかぶった配役を考えると、役者さんが他数作品でキャラがかぶるのが『マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)』みたいなシェアワールドみたいで面白い。どんどんやってくれないかなあ。これ見よがしにやると権利に引っかかるかもだけど、制作側がシレッとやってくれれば、ね!