前原伊助
前原伊助【まえはら いすけ】…ハンデ克服キャラ。紫タンボ鍵付きの七尺槍の使い手(体の事情で九尺の槍を短くして使いやすくしている)。
講談ではコンプレックスから引きこもりがちであったがために本をよく読み文武両道とする場合と、槍は達者だが特に教養は無いとする場合とがある。
土州(土佐の国)卜部伊左衛門の息子。
色が真っ黒で7才の時に難痘にかかり痘面(じゃんこづら…って、なにそれ?)、後遺症で片目の視力を失い、右足を悪くする。(難痘〜なんとう〜ってなんだろうと思いましたが、モーツァルトが天然痘で失明しかけたというからソレ系の病気でしょうか)さらに煮えたぎるやかんの熱湯をかぶって毛も抜けちゃいました(前に5〜6本、横に7〜8本、後頭に5〜6本残っている)。
無愛嬌(アグリー)で殿様も自分にとっつきにくくてどうにも不興をこうむるので弟に家督を譲って仏門に入ろうと大阪に向かうが「秀吉だって変面で出世してるし」 と心変わり。中の島の金森大膳という槍術士に飯炊きとして入門。庭に飛んでくる雀を槍で突いては食べていたら兄弟子に気に入られ稽古をつけてもらうようになり、腕が立つので大膳にも見込まれみっちり修行。
大膳が豊後の府内に帰るおり、自分も道場を去り諸国漫遊の旅へ。
途中、後に吉良邸で戦うことになる水ノ谷重助に沼津で手合わせしたりしながら江戸表で浅野家に就職。
ある日のこと浅野家・家臣の前原清左衛門のお供で槍持ちとして出かけるが、クセのあるその馬はガッタリガッタリと歩く。そこへ伊助がヒョコタリヒョコタリついて行くので清左衛門が「みっともないから」と伊助をあとから来るように指図。仕方なく居酒屋で一杯やってから追いついてみると前原は酒癖の悪い通りがかりの武士・井上五郎左衛門に斬られていた。
「たかが五万三千石の小身大名には腕の立つものはいるまい」などと威張ってるからコレをたたきのめし、応援に駆けつけた堀部安兵衛が伊助の腕前を内匠頭に報告、推挙。
内匠頭は前原の娘・お花(小町娘と評判の美人)と縁組。それから浅野家にご奉公をすることになった。(槍の前原)
いざこざのあった佐々木琢磨という腕自慢を負かしたが仲直りにと痺れ薬の入った酒を飲まされ投獄される。
富森助右衛門と中村勘助に救出されるが琢磨は悪事がバレて切腹になる。
伊助をカタキと付け狙う琢磨の息子・太四郎は伊助を打ち損じるが伊助は太四郎を不憫に思い「お前の腕が上がったら打たれてやる」と言って尺槍を教授する。
やがて太四郎が一人前になるが槍の師匠の伊助をすっかり尊敬し怨みをあきらめ、伊助と兄弟のサカズキをかわす。(講談)
かつて、試合を申し込まれて前原が突き負かした相手(姫路の下坂十太夫)が切腹となり、その娘(小雪)と弟(庄太郎)は乞食となってしまうがそんな事情を知らない前原は偶然知り合った姉弟と仲良くなる。彼らは父を負かした相手(前原)をカタキとして追っているが顔がわからない。
事情を聞いて自分が狙われてることを知るが姉弟に同情してふたりを預かり庄太郎に剣術を教える。すっかり庄太郎が腕前を上げたある日、元禄15年12月14日。前原は書き置きをして討ち入りに出かけた。「主君の怨みを果たさぬうちはこの身はわたしのものではないが、見事本懐を遂げた後、命さえあればかならず討たれてあげるから」
討ち入りのあと毛利家にお預けになった前原は事情を話して庄太郎に介錯をと言付ける。(講談)<「ミフネ版」で映像化されている。
講談ではブチャイクキャラなのでので、ドラマなどで個性あるお顔立ちの役者が当てられると、あ、制作側は知ってるな?と思う。(元禄繚乱の小倉久寛/幸四郎版大忠臣蔵の松井範雄など。…てスイマセン)
2015年にNHKで一龍斎貞山さんがこのお話しをやった時は、面相のことや体に障害がある設定は一切がっさい削除されていた。
コンプライアンス的な配慮かとも存じますが、そうなるとむやみに隊列から離れて呑んだくれるただの不真面目キャラになってしまう。オリジナルには差別される孤独感やそうした境遇やハンディキャップをものともしない伊助の磊落さ、差別者を見返す活躍など稀有な赤穂浪士(赤穂義士)の魅力が豊かなだけに、カットはいかにも惜しい。
赤穂城倒産後、吉良邸近くで「米屋五兵衛」と称して店を開業。屋号は「米屋」だが呉服屋さん。
神崎与五郎と一緒に暮らした。
このサイト開設当初、ドラマなどで前原が、ご用聞きに行った吉良邸の奥を探ろうとして警備の侍に怪しまれ、フルボッコにあう印象があったため、しばらく「殴られキャラ」と紹介していた(「ミフネ版」「元禄繚乱」など)。
しかしフクロにされるのはドラマによって岡野金右衛門(東映や大映)だったり、小山田庄左衛門(大佛次郎「赤穂浪士」)だったりと都合によって変わり、特に前原の専売特許ではないので、修正。
「くっそぉ〜いまに見てろ。このかたきは討ち入りのときに!」
史実では討ち入りのときに先方の武器をおシャカにして回ったお手柄の誉れが高い人。
享年40。
著書に「赤城盟伝」(脱盟者批判あり)。