赤穂城/続赤穂城

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作品概要
制作会社 東映
公開年度 1952年
内蔵助役 片岡千恵蔵
評価 2ツ星


映画ポスター(レプリカ「忠臣蔵ポスター集」東映映像事業部)。

「赤穂城」は内匠頭の饗応役任命〜赤穂へ早打ち到着までを1時間20分ほどかけて、「続赤穂城」はそれから城明け渡しまでを約1時間40分かけて描いている、「忠臣蔵の前半」だけの正編&続編。

当時(戦後)、GHQから禁制作品とみなされていたチャンバラの、ブラックリストの首魁級に思われていた「忠臣蔵」を、東映首脳部が顔見世映画としてどうしてもやりたくて、「封建社会の歪みがレジスタンスの四十七士を生んだ。オオイシは果敢に封建主義打破に立ち上がった民主主義者なんです」と言って、GHQをくどき倒したという。(近代映画 臨時増刊 S31 no.133)

結果、討ち入りは描かかれない、なんだかひじょうにゆっくりした、よく言えば丁寧な作りの作品だが、とても不思議な風合いになっている。


タイトル通り、どちらかというと続編で舞台が赤穂城に移ってからが見せ場となっているのだが、いわば忠臣蔵の前半だけをこんなにゆっくり描いて、だからなんなんだと言いたくなるところなのだが、スタッフやキャスト全員がなんらかの形で日中戦争〜太平洋戦争を体験していると思って鑑賞すると、日本が占領したりされたりというバックグラウンドで描かれる「城明け渡し」シークエンスはなんだか、熱を帯びたシーンにも見え、重厚。

内蔵助=千恵蔵の「何事も穏便が第一」という台詞も含みを感じる。

明け渡しまで城の中で「渡すのか」「抵抗するのか」「どうする!?」で評議を繰り返し、メンバーが減っていく様からただよう赤穂城内の孤立感といい、脇坂勢の軍隊が近づいてくるにつれ高まる緊張感は他作品にはない独特のものがある。

まさにタイトル通り「赤穂城」(=日本?)が主役の、なかなかオン・タイムな映画なのだ。


さて、 たいへん面白いのが、この翌年に公開された同社の「女間者秘聞 赤穂浪士」と、この作品との因果関係である。

プロデューサーが同じで、じつはキャストもほとんど同じである。キャストがかぶるなんてのは、東映ならよくあることじゃねえかとおっしゃる先輩方もいらっしゃるだろうが、吉良を演じる薄田研二が、フランケンシュタインのボリス・カーロフばりにまぶたを張ったメイクであるとか、タン壺の使い方などがすっかり踏襲されている。

そして、「女間者…」で描かれているのはまさに忠臣蔵の後半、山科閑居&一力〜討ち入りなのだ。

製作にまつわるいきさつはまったくわからないが、この「赤穂城/続赤穂城」の続きを意識したことは間違いないものと見える。監督は変わっちゃうが3本でひとつと言っていいのではないだろうか。

(附言)↑…と、意気揚々と書き込みましたが、あらためて「女間者…」を見ると、思いっきりオープニングに本作がダイジェストで挿入されていた。またコレを書いた約一ヶ月後、古いキネ旬増刊号に「赤穂城三部作」として紹介されていたのを発見するに至る。やっぱそうだったのね…


サンフランシスコ講和条約が結ばれて占領時代が終わって、1952年下半期から討ち入りが戻ってくる。


かつてDMM動画で見られた。