大忠臣蔵(NET)

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2022年11月11日 (金) 19:19時点におけるKusuo (トーク | 投稿記録)による版 (その他)

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作品概要
制作会社 NET
公開年度 1971年
内蔵助役 三船敏郎
評価 5ツ星
役者絵:三船敏郎
役者絵:渡哲也


最高傑作。

やさしい昼行灯がいざというとき豹変するイメージの大石内蔵助を、いつも臨戦態勢みたいな三船がどう演じるのかさっぱりイメージがわかなかった。ミフネに「家臣」「家来」という役は想像しにくい。

ところがどうしてどうして。腹の底に何かをグッと飲み込んで目的に向かって一直線の剛直な家老、ミフネ内蔵助が意外にもいい感じに仕上がっているのでした。

「椿三十郎」にはお城勤めは無理っぽいが、「隠し砦の三悪人」の真壁六郎太や「風林火山」の山本勘助をイメージするとすんなり行く。そういう内蔵助(はあと)。リーダーシップに重厚な安定感がある。



ストーリー展開

<以下 ネタバレ含みます>

刃傷沙汰のきっかけは「塩づくりの秘法」を浅野から教えてもらえなかった吉良のイジメのエスカレート。ハラハラする松の廊下のシークエンスが見事。市川中車の吉良上野介は自然に「こんなくそじじい、死んじまえばいいのに」と思わせてくれる、イイ出来。

秘法を命がけで守ってただけに「お家断絶、領地没収」という裁決が見ていてショッキング。


ストーリーが進んでも中だるみもかなり少ない(ほとんど無いと言っていい)。

1年をかけての連ドラとなると、どういう架空エピソードで「もたすか」が課題になってきて、NHKだとメロドラマなどを合間に入れてくる。この「民放初の大河ドラマ」(<という言い方をしてるのを読んだが、)はチャンバラざんまいという作戦に打って出た。

「東軍流の剣の使い手」という部分を膨らませたミフネ内蔵助を頭にいただくことにより、自然に浪士たちも全員腕っ節がよいというながれになって(例外的に中村嘉葎雄の岡野金右衛門のように腕っぷしの悪いのもアクセントで出てきて、これも良い)、なにかと言うとすぐ斬り合いになるのも本作の特徴。架空の間者やシタッパ侍が登場しては斬り殺され、 自刃などもあって最終回までに相当な人死にが出ます。

同時に、大石と上杉と幕府の知恵比べにも見応えがある(吉良側はいっこうに頼りない笑。)

あと、めずらしく講談などの架空エピソードも(いささかのアレンジがあるものの)いちいちしっかり映像化している。実際の赤穂事件のいきさつに、後年にあとからあとから作られたいろんな銘々伝、外伝を、つじつまを合わせてドラマのエピソードに盛り込んでおり、腐心の後がうかがえる。NHKの大河みたいに原作ありき(でもないか)じゃないぶん縛りが無いのかも。(あとで読んだ「実録テレビ時代劇」能村庸一著によると、原作使わない&おなじみエピソードは全部盛り込む…は企画立ち上げ当初の条件だったそうである)

また、オリジナルストーリーにしてもすこぶる「講談調」の展開だったりする。



配役

最も注目すべきは、出演陣の豪華さ。五社協定の垣根を越え(ていうか、この初回放送年に協定は消滅してるので、それを反映した?)「こんな人も出てるのか」とおどろくような顔ぶれなのがとにかく楽しい。そうして出来たキャラクターの相関関係や活躍と言ったらない。

映画界やテレビ界、演劇の世界から人気者を集め、おそらく史上最高の贅沢な顔合わせではないだろうか。たとえば東映「赤穂浪士」の萬屋錦之助の脇坂淡路守と東宝「忠臣蔵 花の巻雪の巻」の市川中車の吉良上野介が(それぞれその役で)同じ画面で拝めるんだヨお立ち会い。

それはたとえばミュージカル「RENT」のアンソニーラップが、出演作の「スター・トレック・ディスカバリー」のメンバーと一緒に(艦隊のユニフォームのまま)「Seasons of Love」を熱唱するような、そんなゴキゲンなのである。(よけいわかりにくいか…)

世代的にうれしかったのは、武器調達のかどで拷問にあってる天野屋利兵衛を釈放する粋(イキ)な大阪のお奉行さんを中村梅之助が特出で演じてるとこ。彼は当時江戸町奉行「遠山の金さん捕物帳」放送中で大人気だったのだ!このサービスには当時のお茶の間はさぞ喜んだことでしょう。(さらに付け加えると天野屋を演じた前進座のスター・中村翫右衛門は梅之助のお父さん。…まさかと思って天野屋と一緒に石を抱かされる子役を確認したが中村梅雀ではないようだw)


当時「大江戸捜査網」(三船プロ系。他局)でおきゃんなスリを演じてた岡田可愛が、似たようなパーソナルでカツシンの俵星玄蕃の回に出てるのも、「あゝ忠臣蔵」でも駕籠人足を演ってた小松方正を丑五郎で登板させてるのも、居酒屋主人といえば木田三千雄とか、酔っぱらいなら三井弘次といったように、お茶の間の"おなじみ"や"なんか見たことある"を意識したシェアワールド的なキャスティングがいちいちうれしい。

10話に1回くらいのペースで当時人気のお笑い芸人(Wけんじ。ケーシー高峰など)が登場するのもニクい。

ともかく、「楽しませよう」という心意気がこうまでキャスティングに活かされてる作品は珍しいと思う。(いや、無い!)



気がかり

気がかりだったのは、調子に乗っていろんな人たちを浪士として豪華にキャスティングしたのはいいが、肝心な討ち入りの時にこのそうそうたる顔ぶれが一堂に会せるのか?ってコト。そしたら案の定、伴淳三郎はじめフランキー堺など何人もの大事なメンバーが討ち入りのときに不在!しょぼーん。制作費10億円でも全員集合は無理だったかぁ〜。


加筆:予算もさることながら、スケジュールも合わなかったのではと思う。

あらためて作品を見てみると、石坂浩二の三平と山本陽子のおかるで、前後編の2回にわたって山崎街道の悲恋ドラマが展開されるのだが、よく見ると一緒にいるはずの三船敏郎が、石坂と山本両所と同フレームに収まってるシーンがひとつもない。編集で上手に見かけの辻褄を合わせている。もそっと遡ると、そもそも石坂の三平は、松乃大廊下事件のあと、早駕籠に乗ってなきゃいけないのに、そのシーンでは後ろ姿ばかりでセリフの無い代役さんで間に合わせている。

人気スター勢揃いという高いこころざしも、スケジュールの都合という難題には、すでに序章から振り回されていたようである。



その他

女性の撮り方は今ひとつ美しくないかなと思ったものだが、あらためて見てみると、描かれている女子メンはどれもナヨナヨ一辺倒の添え物には終わっておらず、敵キャラも味方も男子メンに負けない魅力的な女丈夫に描かれている。ジェンダーに固執しない登場人物たちは、時代の最先端を行った表現だったのかもしれない。

千坂兵部が放つ隠密・お蘭の香月晃(元宝塚)が三船敏郎の次くらいに四六時中出ずっぱりなのも本作の特徴。


デジタル放送になって以降の忠臣蔵作品はDVDよりBSやCSで見るほうが映像が綺麗だったりするが、本作(フィルム作品)については、地上波の再放送やBSなどよりもDVDの方が綺麗だったりする。さらに、始末の悪いことに差別用語がカットになってたりする。ただ、BSとかは字幕がつくのでこれもおろそかにできない。


音楽良いです。いさましいけど、どっかさみしい。ぱっと頭に浮かぶ「忠臣蔵」の音楽と言えば、コレです。


ノンケの人が見てもすぐ引き込まれるという作風ではなく、あくまで昭和の時代劇ファン、三船ファン向けと思っていたが、過日まったくノンケの後輩が「南部坂」だけ見てたちまちハマり、最初に遡ってイッキ見していたのでやはり魅力たっぷりの連ドラなのかもしれない。


大忠臣蔵 上巻 [DVD]

三船敏郎.司 葉子.尾上菊之助.佐久間良子.伊藤雄之助.渡 哲也.有島一郎.田村正和.フランキー堺.丹波哲郎.ほか 出演, 土居通芳.村山三男.西山正輝.古川卓己.丸 輝夫 監督

大忠臣蔵 中巻 [DVD]

三船敏郎 出演, 司葉子 出演

大忠臣蔵 下巻 [DVD]

佐久間良子 出演, 長谷川明男 出演