「蜷川幸雄の仮名手本忠臣蔵」の版間の差分
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2016年5月17日 (火) 14:07時点における版
作品概要 | |
制作会社 | 舞台 |
---|---|
公開年度 | 1988年 |
内蔵助役 | 近藤正臣 |
評価 |
全編、ところどころ整理したり膨らましたりしてるけどほぼオリジナル(歌舞伎)をトレースしてて、あんまり上演されない段までとにかく「仮名手本忠臣蔵」を全部(といっても陽気な八段目が無い)を通して演ってるから、これがまずすごい。
だからセリフもほとんどオリジナルと同じ「昔なセリフ」なのだが、マトモにやってたら到底上演時間内におさまらないので、ふつうに喋るスピードにアレンジされており(というより、1.5倍くらいマキの入った感じ)、役者さんはさぞかし大変だったろうなと思うが、きっとエネルギッシュな蜷川演出で引っ張って、みんなすごくがんばったのだなあ。見てて気分いい。女優さんがちょっと急いでるかんじがあるけど。
高師直の成田三樹夫がまずもう、すばらしい。もともとあたしはこの人が好きなんでヒイキ目なんだろうが、なんと素敵な声でしょう。滑舌もいいし。表情もいい。演技もいい。かっこいい!前半はこの人のおかげでグイグイ引き込まれる。この人と近藤正臣で星三つ稼いでるかんじ。
古いのやってるわりにスタイリッシュに感じ、のめり込むと「時代劇」に見えなくなってくる。ビデオのパッケに「ギリシャ悲劇の味わい」って書いてあるけど、ギリシャ悲劇知らないけど、たぶんそんなかんじなんでしょうねえ。ヨーロピアンなニオイがしてまいります。
そもそも悲劇要素ばっかしの仮名手本忠臣蔵から、明るい要素を徹底して排除した構成のせいか、後半になるにしたがって盛り上がるどころかどんどん陰気くさい気分になって「討ち入り」もスカッとしない。ていうのはたぶん、計算かもですが。
あと、儀式化された演出をスピードアップすると、思わぬところで観客から笑いが起こるのもおもしろかった。十段目、突如長持ちからバーンと近藤正臣飛び出しちゃったりすると実際こっけいに見えます(ふつうにやっても滑稽か…)。
義太夫の代わりにオペラみたいな歌が入ります(音楽:宇崎竜童)。
好き嫌いは別れるかも。
ちなみに蜷川先生、俳優時代にミフネ版大忠臣蔵で間十次郎やってます( ^∇^ )。
<加筆>
2016年5月 蜷川氏の訃報に接し、生前に「的はずれな批評」を嘆いていた氏の遺志を尊重して、上記の表層をなでただけの稚拙な感想は近々内容をあらためる(この素直な感想も残しつつ、ですな)予定です。