「鷺坂伴内」の版間の差分

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[[吉良上野介|吉良]]の側用人の家老。[[通し狂言 仮名手本忠臣蔵|仮名手本忠臣蔵]]のキャラなので、厳密には高師直の家来。マヌケメイクが印象的な「道化方」「半道敵(はんどうがたき:半分道化の敵役)」。
 
[[吉良上野介|吉良]]の側用人の家老。[[通し狂言 仮名手本忠臣蔵|仮名手本忠臣蔵]]のキャラなので、厳密には高師直の家来。マヌケメイクが印象的な「道化方」「半道敵(はんどうがたき:半分道化の敵役)」。
  
顔世御前([[瑤泉院]])の腰元・[[お軽]]が好き(彼女は[[早野勘平|恋人]]がいるのに)でセクハラが絶えない。
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顔世御前([[瑤泉院]])の腰元・[[お軽]]が好き(彼女は[[早野勘平|恋人]]がいるのに)でつきまといやセクハラが絶えない。
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三段目「進物の場」ではちょっとしたコント仕立てで[[加古川本蔵]]の賄賂を受け取り、主人・師直に取り持つ。
 
三段目「進物の場」ではちょっとしたコント仕立てで[[加古川本蔵]]の賄賂を受け取り、主人・師直に取り持つ。
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三段目のあとの「道行旅路の花聟」で、[[早野勘平|勘平]]と一緒に田舎に引っ込もうとする[[お軽]]を追いかけて彼女だけ奪取しようとするが勘平の返り討ちに遭い失敗。幕が閉まるのと一緒に舞台上手(舞台の向かって右の方)に追いやられるシーンが滑稽。
 
三段目のあとの「道行旅路の花聟」で、[[早野勘平|勘平]]と一緒に田舎に引っ込もうとする[[お軽]]を追いかけて彼女だけ奪取しようとするが勘平の返り討ちに遭い失敗。幕が閉まるのと一緒に舞台上手(舞台の向かって右の方)に追いやられるシーンが滑稽。
  
そのあと一力まで行って[[斧九太夫]]とともに由良之助の動向を探るが出番はここで終了。ちょっともったいない。息抜きのエッセンスとしてのちょっとした扱いであります。
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七段目では、一力茶屋まで現れて、[[斧九太夫]]とともに由良之助の動向を探るが出番はここで終了。ちょっともったいない。息抜きのエッセンスとしてのちょっとした扱いであります。
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原作では十一段目(最後)に、メンバーが師直の首を取ってホッとしてるところに薬師寺次郎左右衛門と共にもう一回出てきて、由良之助に斬りかかるが二人ともあえなく斬り殺されるという終焉が用意されている。昭和16年の上演でそのシーンがあったのが最後だとか(平成21年6月現在)。
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ちなみにこの十一段目で主君・師直とともに討ち死にする関係から伴内のモデルは清水一学なのでは?という説がある。ネーミングのルーツは、一学が生まれた吉良の領内の宮迫(みやはざま)村のそばに鷺坂という坂があり、秀次公をよく笑わせてた三河の伴内という男の存在もあったということで、これがルーツではないかと三田村鳶魚は推測しているそうだ。
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モーリス・ベジャールのバレエ「[[ザ・カブキ]]」では、「オセロ」に出てくる卑怯未練な奸臣イアーゴのよう(って、シェイクスピア劇は知らないんだが)にとらえられ大きく扱われている。
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歌舞伎の斧九太夫キャラと合体することで、お軽へのストーカーぶりや主人・師直への忠誠ぶりが「執念深さ」というかたちでうまく表現され、最終的には由良之助に殺されるというシッカリした末路が用意されている。ひじょうに昆虫っぽいいやな悪役で、ソレがものすごい魅力にふくらんでいる。ぶっちゃけ、バレエ版では主役をしのぐほどに強烈な個性のキャラであり、おそらくスキルの高いダンサーが演じることになってるのではないだろうか。
  
原作では十一段目(最後)に、師直の首を取ってホッとしてるところに薬師寺次郎左右衛門と共にもう一回出てきて、斬りかかるが斬り殺される終演が用意されているが、昭和16年の上演でそのシーンがあったのが最後だとか(平成21年6月現在)。
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2016年のポートランド州立大学の学生たちによる英語劇「Revenge of the 47 Loyal Samurai」(仮名手本忠臣蔵をほぼまんま演るというすごい課題)でも、伴内の滑稽なピカロぶりは理解されやすいらしく、場内を沸かしていた。
  
  
モーリス・ベジャールのバレエ「[[ザ・カブキ]]」では、「オセロ」に出てくる奸臣イヤーゴのようにとらえられ大きく扱われている。歌舞伎の斧九太夫キャラと合体することで、お軽へのストーカーぶりや主人・師直への忠誠ぶりが「執念深さ」というかたちでうまく表現され、最終的には由良之助に殺されるというシッカリした末路が用意されている。ひじょうに昆虫っぽいいやな悪役で、ソレがものすごい魅力にふくらんでいる。ぶっちゃけ、バレエでは主役をしのいでもっとも強烈な個性のキャラであり、おそらくスキルの高いダンサーが演じることになってるのではないだろうか。
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ドラマの吉良家では'''[[松原多仲]]'''という家来がドラマによく出てくる。講談なんかでは'''粕谷平馬'''(かすや へいま)という人物で登場。(古い日活映画とか)
  
  
講談なんかでは粕谷平馬(かすや へいま)という人物で登場。(古い日活映画とか)
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画像:En yu ji.jpg|thumb|鷺坂伴内について言及している清水一学の墓所・円融寺。お墓は矢印あたり。
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2022年11月3日 (木) 19:50時点における最新版

役者絵:横山エンタツ

鷺坂伴内【さぎざか ばんない】

吉良の側用人の家老。仮名手本忠臣蔵のキャラなので、厳密には高師直の家来。マヌケメイクが印象的な「道化方」「半道敵(はんどうがたき:半分道化の敵役)」。

顔世御前(瑤泉院)の腰元・お軽が好き(彼女は恋人がいるのに)でつきまといやセクハラが絶えない。


三段目「進物の場」ではちょっとしたコント仕立てで加古川本蔵の賄賂を受け取り、主人・師直に取り持つ。

三段目のあとの「道行旅路の花聟」で、勘平と一緒に田舎に引っ込もうとするお軽を追いかけて彼女だけ奪取しようとするが勘平の返り討ちに遭い失敗。幕が閉まるのと一緒に舞台上手(舞台の向かって右の方)に追いやられるシーンが滑稽。

七段目では、一力茶屋まで現れて、斧九太夫とともに由良之助の動向を探るが出番はここで終了。ちょっともったいない。息抜きのエッセンスとしてのちょっとした扱いであります。

原作では十一段目(最後)に、メンバーが師直の首を取ってホッとしてるところに薬師寺次郎左右衛門と共にもう一回出てきて、由良之助に斬りかかるが二人ともあえなく斬り殺されるという終焉が用意されている。昭和16年の上演でそのシーンがあったのが最後だとか(平成21年6月現在)。


ちなみにこの十一段目で主君・師直とともに討ち死にする関係から伴内のモデルは清水一学なのでは?という説がある。ネーミングのルーツは、一学が生まれた吉良の領内の宮迫(みやはざま)村のそばに鷺坂という坂があり、秀次公をよく笑わせてた三河の伴内という男の存在もあったということで、これがルーツではないかと三田村鳶魚は推測しているそうだ。


モーリス・ベジャールのバレエ「ザ・カブキ」では、「オセロ」に出てくる卑怯未練な奸臣イアーゴのよう(って、シェイクスピア劇は知らないんだが)にとらえられ大きく扱われている。

歌舞伎の斧九太夫キャラと合体することで、お軽へのストーカーぶりや主人・師直への忠誠ぶりが「執念深さ」というかたちでうまく表現され、最終的には由良之助に殺されるというシッカリした末路が用意されている。ひじょうに昆虫っぽいいやな悪役で、ソレがものすごい魅力にふくらんでいる。ぶっちゃけ、バレエ版では主役をしのぐほどに強烈な個性のキャラであり、おそらくスキルの高いダンサーが演じることになってるのではないだろうか。

2016年のポートランド州立大学の学生たちによる英語劇「Revenge of the 47 Loyal Samurai」(仮名手本忠臣蔵をほぼまんま演るというすごい課題)でも、伴内の滑稽なピカロぶりは理解されやすいらしく、場内を沸かしていた。


ドラマの吉良家では松原多仲という家来がドラマによく出てくる。講談なんかでは粕谷平馬(かすや へいま)という人物で登場。(古い日活映画とか)



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