身代わり忠臣蔵

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作品概要
制作会社 東映
公開年度 2024年
内蔵助役 永山瑛太
評価 3ツ星


(後日また加筆予定)

(ネタバレ注意)


 おもしろかった。

 「嫌われ者の殿・吉良上野介(ムロツヨシ)が江戸城内で斬られ、あの世行き!斬った赤穂藩主は当然切腹。だが、殿を失った吉良家も幕府の謀略によって、お家存亡の危機に!! そんな一族の大ピンチを切り抜けるべく、上野介にそっくりな弟の坊主・孝証(ムロツヨシ)が身代わりとなって幕府をダマす、前代未聞の【身代わりミッション】に挑む!」

 …東映の公式ホームページより抜粋


 長いあいだ愛されてきた義士伝のエピソードをアレンジするのではなく、最近にありがちな、あらためて赤穂事件を素材に遊びましょう、という作品なので、忠臣蔵ファン的な視点でアレコレ言ってもしょうがないし、番宣見てたときからこれは「ムロツヨシさんを楽しむ映画」だとわかってたんで、彼がどうのびのびと演じるのかが見どころで、それはうまく行ってたと思う。

「もしも吉良が死んでいたら」で出来る遊びをいろいろ試せてると思うし、笑いもしたし、ホロリともした。


 ただなー…


 このストーリーはウォーレン・ベイティの「天国から来たチャンピオン」みたいな、イヤなじじいに別人が乗り移る(今回の場合は影武者が身代わりをするのだが)ことで性格が変わり、それでこれまでそのじじいを敬遠してた人たちの心変わりや周囲の環境の変化とともにそれがハートウォーミングなラストへ繋がっていくパターンに振り切ってたほうが涙の量も違ってたと思うのだが、(こっちの勝手な)期待に反して着地がゆるかったように思う。

 せっかく最近では珍しく吉良を徹底した「傲慢でイヤミたっぷりな」「悪口を大声で言う」ようなキャラにしていて、身代わりになったあとは「(お陰で)お家全体が明るくなった」つってるわりに、なぜかもともと吉良邸内では家来に慕われてたり子供がなついてたりするシーンがあるから、身代わり前後のコントラストが弱く、言ってることとやってることの矛盾をいささか感じるのだ。(斎藤宮内だけはパワハラ上等のM男だからこたえないという説明はあるが)


 あと、実は気にならないていどの細か〜いほころびがちょいちょいあって(ああ、言い出し始めてしまった)、あまりに細かすぎるので「ま、いいか」とやり過ごして見ているうちにチリは積もり、ラストの市街戦のとある演出(パンフレットにも書いてあるからかまわないとは思うがくわしくは後日加筆します)で、そのほころびが急に見過ごせなくなって一気に破ける感があった。

 たぶんこの市街戦についてはいろんなアイデアが百出したんだと思うが、コメディとして成立させるためにしかたがなかったんだろうか?

(それともあれかな。「こんな市街戦がある映画なんですから、それまでの細かいことはオメコボシを!」と言うつもりなのかな)


 ちなみにこまかいほころび、ちょっぴり申し上げますと…

 …おっぱいを直接に触りたいなら襟元から手を突っ込むのではなく、絶対に身八つ口のほうが楽だ思うんだけどな…。とか、高尾太夫とはまたベタな(&忠臣蔵と無関係だが落語や浪曲の「紺屋高尾」で有名な)名前を引っ張ってきたもんだな。とか、やりたい設定を成立させるためにずいぶんとアレコレ省略したなあ。とか、四十七士がみんな面長で似た顔立ちなのはメインキャラを際立たせるためだろうか…みたいなそういうやつ。


 けっこう赤穂びいきな作品にありがとうを言いたいが、こういう話を書ける人に、真正面から在来の友情物語をかっこよくまとめてもらいたいなーと思いました。