「血槍無双」の版間の差分

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{{Cinema|制作=東映|公開=1959|内蔵助=大河内伝次郎|星=3|頃=}}
 
{{Cinema|制作=東映|公開=1959|内蔵助=大河内伝次郎|星=3|頃=}}
  
講談や浪曲でおなじみの[[俵星玄蕃]]と[[杉野十平次]](片岡千恵蔵と大川橋蔵)の友情物語を、黒澤映画で「生きる」「七人の侍」<small>ほか</small>で共同脚本をやった脚本家、小国英雄が映画的にどう膨らますかが見ものの作品。もとのおはなしは「キャラ図鑑」の[[俵星玄蕃]]の項目をみていただくとわかります。
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[[画像:Jyuheiji.jpg|thumb|役者絵:大川橋蔵]]
  
さて、小国先生、まず俵星玄蕃に妹をこしらえた。それから内弟子は排除した。そして一番大きい特徴は、夜鳴きそば屋に身をやつしている杉野十平次を'''腕っ節の悪い、足手まといの浪士'''に仕立て上げた。これが俵星玄蕃と十平次の友情を描くのに重要な要素になってる。考えてみると、あれだけいろんなキャラがいるのに、四十七士ってやつはわざとらしく手だればっかりなんですよね。たしかに足手まといっていうキャラがいてもいいと思うんですよね。
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【ちやり むそう】
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講談や浪曲でおなじみの[[俵星玄蕃]]と[[杉野十平次]](ベテラン片岡千恵蔵と、若手・大川橋蔵。初の本格的競演<small>(註01)</small>)の友情物語を、東映映画でおなじみの(&黒澤映画で「生きる」「七人の侍」<small>ほか</small>で共同脚本)脚本家、小国英雄が映画的にどう膨らますかが見ものの作品。もとのおはなしは「キャラ図鑑」の[[俵星玄蕃]]の項目をみていただくとわかります。
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さて、小国先生、まず俵星玄蕃に妹をこしらえた。それから内弟子は排除した。そして一番大きい特徴は、夜鳴きそば屋に身をやつしている杉野十平次を'''腕っ節の悪い、足手まといの浪士'''に仕立て上げたこと。これが俵星玄蕃と十平次の友情を描くのに重要な要素になってる。考えてみると、あれだけいろんなキャラがいるのに、四十七士ってやつはわざとらしく手だればっかりなんですよね。たしかに足手まといっていうキャラがいてもいいと思います。
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そして映画の尺にするためにもう一味。それが[[お蘭]]であります。講談では[[倉橋伝助]]の話で描かれる、吉良邸出入りのエロねえさんお蘭のエピソードが加えられ、玄蕃の妹とせっかく仲良くしてる十平次に横恋慕。ちょっとしたアクセントになってます。
  
そして映画の尺にするためにもう一味。それが[[お蘭]]であります。講談では[[倉橋伝助]]の話で描かれる、吉良邸出入りのエロねえさんお蘭が登場して、玄蕃の妹とせっかく仲良くしてる十平次に横恋慕。ちょっとしたアクセントになってます。
 
  
 
基本的にコミカルで楽しい娯楽時代劇。弱かった十平次が討ち入りのときには「タタミ返しの術」をマスターしてて「先生!出来た!!」と天井を仰ぎながら叫び、タタミを槍で突いてはひっくり返しながら敵と戦ってよく働くのであった。めでたし、めでたし。
 
基本的にコミカルで楽しい娯楽時代劇。弱かった十平次が討ち入りのときには「タタミ返しの術」をマスターしてて「先生!出来た!!」と天井を仰ぎながら叫び、タタミを槍で突いてはひっくり返しながら敵と戦ってよく働くのであった。めでたし、めでたし。
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昔の映画なので、消えもの(食べ物)のアップなども無く、そばがどんなものかディティールがはっきりしないものの、劇中において何度も出てくる、みんなが「おいしいおいしい」と言ってそばを食べるシーンはなかなかハラペコをさそう。見ていておそばが食べたくなっちゃうし、あとからも思い出すし…。あ〜書いてて今も食べたい!
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吉祥寺の闇太郎のマスターや、義太夫の豊竹咲大夫先生もお好きとおっしゃっておりまして、ある世代には人気。
  
  
 
しっかしつくづく忠臣蔵って、少年ジャンプが隆盛を極めていたときのキーワード「友情」「努力」「勝利」を網羅してるよなあ。
 
しっかしつくづく忠臣蔵って、少年ジャンプが隆盛を極めていたときのキーワード「友情」「努力」「勝利」を網羅してるよなあ。
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※同じ原作で平成元年、堤大二郎を主役に向かえて「[[女と男の忠臣蔵]] 討ち入りそば屋の一番手柄、無辺流畳返し!!」というテレ朝のドラマが踏襲している。
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註01…当時の東映京都の速報チラシより。
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[[Category:くすおの忠臣蔵作品評|1959]]

2021年2月1日 (月) 22:19時点における版

作品概要
制作会社 東映
公開年度 1959年
内蔵助役 大河内伝次郎
評価 3ツ星


役者絵:大川橋蔵

【ちやり むそう】

講談や浪曲でおなじみの俵星玄蕃杉野十平次(ベテラン片岡千恵蔵と、若手・大川橋蔵。初の本格的競演(註01))の友情物語を、東映映画でおなじみの(&黒澤映画で「生きる」「七人の侍」ほかで共同脚本)脚本家、小国英雄が映画的にどう膨らますかが見ものの作品。もとのおはなしは「キャラ図鑑」の俵星玄蕃の項目をみていただくとわかります。


さて、小国先生、まず俵星玄蕃に妹をこしらえた。それから内弟子は排除した。そして一番大きい特徴は、夜鳴きそば屋に身をやつしている杉野十平次を腕っ節の悪い、足手まといの浪士に仕立て上げたこと。これが俵星玄蕃と十平次の友情を描くのに重要な要素になってる。考えてみると、あれだけいろんなキャラがいるのに、四十七士ってやつはわざとらしく手だればっかりなんですよね。たしかに足手まといっていうキャラがいてもいいと思います。

そして映画の尺にするためにもう一味。それがお蘭であります。講談では倉橋伝助の話で描かれる、吉良邸出入りのエロねえさんお蘭のエピソードが加えられ、玄蕃の妹とせっかく仲良くしてる十平次に横恋慕。ちょっとしたアクセントになってます。


基本的にコミカルで楽しい娯楽時代劇。弱かった十平次が討ち入りのときには「タタミ返しの術」をマスターしてて「先生!出来た!!」と天井を仰ぎながら叫び、タタミを槍で突いてはひっくり返しながら敵と戦ってよく働くのであった。めでたし、めでたし。

昔の映画なので、消えもの(食べ物)のアップなども無く、そばがどんなものかディティールがはっきりしないものの、劇中において何度も出てくる、みんなが「おいしいおいしい」と言ってそばを食べるシーンはなかなかハラペコをさそう。見ていておそばが食べたくなっちゃうし、あとからも思い出すし…。あ〜書いてて今も食べたい!


吉祥寺の闇太郎のマスターや、義太夫の豊竹咲大夫先生もお好きとおっしゃっておりまして、ある世代には人気。


しっかしつくづく忠臣蔵って、少年ジャンプが隆盛を極めていたときのキーワード「友情」「努力」「勝利」を網羅してるよなあ。


※同じ原作で平成元年、堤大二郎を主役に向かえて「女と男の忠臣蔵 討ち入りそば屋の一番手柄、無辺流畳返し!!」というテレ朝のドラマが踏襲している。


註01…当時の東映京都の速報チラシより。