槍一筋日本晴れ

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2017年6月27日 (火) 15:18時点におけるKusuo (トーク | 投稿記録)による版

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作品概要
制作会社 東宝
公開年度 1959年
内蔵助役 ---
評価 2ツ星


もりいのだいすきな名バイプレイヤー・加東大介が俵星玄蕃で主役を張る。

見終わったざっくりした感想は「加東大介は俵星玄蕃をやって申し分無いが、主役じゃなくてよい」…役者の「適材適所」をすごく感じる。

人気テレビドラマのサブキャラを主役にしてスピン・オフを作る現代の遊び心とは違い、「加東大介で一本やろうじゃないか!」という心意気(そういうコンセプトで製作されたのかどうか知らないが)で作ってる昭和っぽい意気込みは人情味は感じても見応えに届いていない。なんて言うか、犬塚弘の主演映画※01を見ているみたいな心持ちに似てる。


物語は、稽古がキビシすぎて門弟がひとり(森川信)しかいない槍の名人・俵星玄蕃(本人はいたって磊落)は雀を槍で突いて捕獲し(生類憐れみの令は?)飢えをしのぐ毎日を送っているが、ある日そこへ元・松平藩の足軽だったと名乗る若者(小泉博)が強引に弟子入りをしてくる。

酒好きの玄蕃が懇意にしてる居酒屋・ます屋(金語楼&清川虹子)の長女で芸者のお滝(藤間紫)がいろいろ就職先を世話してくれるが、スカウトに積極的な上杉家にはどうしても気がのらない。(MOVIE WALKERのサイトに「三百石で迎える」とあるが二百石のまちがい。2017.6月現在)

おはなしはその若者が怪しげに誰かと密会してる謎と、玄蕃と上杉家のこれからの関係に注目が集まる。


講談の俵星玄蕃のストーリーをベースにしているが、上杉家に仕官したくない理由は赤穂浪士に同情を寄せているからではなく自分の腕前をもう少し高く買ってほしいから。そして蕎麦屋の杉野は出てこない。…このへんが忠臣蔵ファンとしては残念で、そうしたアレンジの理由がわからない。

それでも玄蕃先生が上杉家になびくのは、唯一の門弟・野辺地万作(聞いたことがない)が胸を患って血を吐いちゃったのでお金が入り用になったから。


近年の忠臣蔵を辛く言うときもりいは「どうして定番をぶち壊すのか」とこぼすが、昔の場合は「おなじみ」を手がけるということはマンネリを感じてる観客を相手にハードルを上げる作業になってしまうので、やはり逃げ道としてアレンジという手を使うのだろうか。

ファンとしてのこだわりはともかく、一本の作品としては軽妙なおもしろ映画には慣れている青柳信雄監督の運び具合は生理的に心地良くオハナシもまとまってて悪くない。(出演者もみんな好き)


忠臣蔵映画というくくりにおいては、赤穂浪士との関係より貧乏生活をどうしのぐかに重点を置いた本作は一ヶ月前の公開で競作という感じになった直球勝負の「血槍無双」(オーソドックスな、蕎麦屋の杉野と玄蕃の友情物語)と水を開けられてる感じがする。


※01…高度成長期の人気コミックジャズバンド「ハナ肇とクレージーキャッツ」のギター・植木等は押しも押されぬスターで映画も当たったが、二番人気のトロンボーン・谷啓も映画を当てた。年配のサブリーダー(だっけ?)ウッドベースの犬塚弘(すごく良い人)も推そうとしたナベプロは「ほんだら剣法」など主演映画をリリースした。映画はい面白いが「ニッポン無責任時代」や「図々しい奴」に比べると知ってる人は少ないと思う。