悲恋おかる勘平

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2012年5月5日 (土) 06:19時点におけるKusuo (トーク | 投稿記録)による版

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公開当時のパンフレット

残念ながら2012年5月現在見ていないのだが、武勇伝ではなく、悲恋もの(で、イイトコなし)という特殊なくくりのスピンアウトである本作を、どうしてもおはなししたくて、レビューではなく、ご紹介(というか、おうわさ)であります。

仮名手本忠臣蔵の五段目と六段目にあたる、お軽&勘平の悲劇を映画化したもので、30でこぼこの勘平を24歳の萬屋錦之介(当時:中村)が演じている。

映画化するにあたって、桃井若狭助や鶴岡八幡宮、高師直顔世御前への横恋慕やラブレターのやりとり一切がカットされて(でしょうな)、阿久里が赤穂明神のお札を江戸城までお軽に託すという新しいエピソードを用意して、その時に事件が起こる設定になっている。


とにかくマジメ一貫のキャラ・勘平くんはおかると彼女の実家に引っ込んだあと猟師をしてるが、茶店でお家断絶のうわさを聞いてお軽一家とミズさかずきして赤穂城に駆けつけるけど門前払いされて、あげく無血開城ってことで悲嘆に暮れてすごすごお軽ンちに戻り、心を閉ざして日ごとに荒れていく。

そんなある日神崎与五郎から内蔵助が殿さまの石牌建立の話を聞き、舅・与市兵衛に十両の金策をたのむ。

お軽は茶屋に売られる。与市兵衛は売った金を定九郎に強奪され殺される。勘平は定九郎を誤射するが警察に通報するでもなく、あろうことか死体がフトコロに飲んだ五十両をネコババする。なんだかんだで勘平切腹。


この話は勘平を一途に愛するお軽と、愛娘の幸せをよろこぶ与市兵衛ら両親をよそに、シアワセとはほど遠いところで悩み苦しみ続ける勘平のコントラストがうまくいけばいいのだろうが、知らない人のサイト・レビューによると「なんじゃこの勘平というキャラは?」という印象だったという。

腕が立つわけでもなければ、かといって恋にも生きず、ウジウジしてたかと思うと急に農家のじいさんに金の無心をしたり死体からネコババしたりと、どこに魅力を見いだしてイイかわからない「勘平像」に、仮名手本を下敷きに持ってない観客はついていけないらしい。(でしょうな)


だめんずの魅力は、ご清潔な東映時代劇というよりも、ATGみたいなかんじじゃないと、うまく表現できないと思います。若いショーケンとか、原田芳雄がお似合いなキャラなんだと思う。勘平って。


人形浄瑠璃や歌舞伎がこのだめんず・ストーリーをうまく人気商品に作れてるのは、緊張感の中にギャグをちりばめてるところだとか、鷺坂伴内(映画ではカット)の圧倒的な存在感なのである。

昭和の映画人はマジメなのか、西洋のヒトが惹かれるような、エンターテインメントに欠かせないこうした要素は省いちゃうのであります。だから後世に残らない「なんじゃこら?」作品になっちゃう。

(つか、なにしろ見ていないので、ほんとうはなんとも言えないのでありますが…)


それはそれとして、スチルに、討ち入り装束の早野勘平蔵を見ると、あたしみたいなファンは泣けちゃう。