「忠臣蔵 桜花の巻 菊花の巻」の版間の差分

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{{Cinema|制作=東映|公開=1959|内蔵助=片岡千恵蔵|星=4|頃=}}[[画像:Fuwa yamagata.jpg|thumb|役者絵:山形勲]]
 
{{Cinema|制作=東映|公開=1959|内蔵助=片岡千恵蔵|星=4|頃=}}[[画像:Fuwa yamagata.jpg|thumb|役者絵:山形勲]]
[[吉良上野介|吉良]]がチョンガーだったり、若者のはずの[[橋本平左衛門]]が病気のおじいさん(月形龍之介)だったり、浪士側から[[女間者]](美空ひばり!)が出るので[[岡野金右衛門]]の絵図面取りが無かったり、橋本が序盤で切腹しちゃうので[[萱野三平]]はネタがかぶらないように病死になったりと、あっちこっちにちょいちょい独特のオリジナルなアレンジがあることが「忠臣蔵」ビギナーが見るといささかの混乱を来たす。
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前回の東映の忠臣蔵は、東映初の色彩映画だったが画面がワイドではなかった、原作付きの「赤穂浪士」。今回はオリジナル作品で、ワイド画面のカラー。
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ふつうの映画なら14〜5ハイというセットの数が、本作は75ハイも組んだという。
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[[吉良上野介|吉良]]がチョンガーだったり、若者のはずの[[橋本平左衛門]]が病気のおじいさん(月形龍之介)だったり、浪士側から[[女間者]](美空ひばり!)が出るので[[岡野金右衛門]]の絵図面取りが無かったり、橋本が序盤で切腹しちゃうので[[萱野三平]]はネタがかぶらないように病死になったりと、あっちこっちにちょいちょい独特のオリジナルなアレンジがあることが「忠臣蔵」の内容をおぼえたてのビギナーが見るといささかの混乱を来たす。
  
 
が、逆にすっかり忠臣蔵に慣れてから見ると自決する橋本の遺志を継いで娘のひばりが恋仲の金右衛門と祝言をあげてからスパイ活動に入るのは「[[山岡覚兵衛]]」や「金田屋お蘭」の[[お雛]]のバリエーションと気づくし、「義士伝」的な味付けはあちこちに心がけられていて、実はスピリットをハズしていない。
 
が、逆にすっかり忠臣蔵に慣れてから見ると自決する橋本の遺志を継いで娘のひばりが恋仲の金右衛門と祝言をあげてからスパイ活動に入るのは「[[山岡覚兵衛]]」や「金田屋お蘭」の[[お雛]]のバリエーションと気づくし、「義士伝」的な味付けはあちこちに心がけられていて、実はスピリットをハズしていない。
  
 
大正期にはすでにオーソドックスな「忠臣蔵」が「千篇一律」と冷評されてるのを見ると、ここらあたりで変わったアレンジでアプローチしようよ!ということにでも相談がまとまったのかもしれない。
 
大正期にはすでにオーソドックスな「忠臣蔵」が「千篇一律」と冷評されてるのを見ると、ここらあたりで変わったアレンジでアプローチしようよ!ということにでも相談がまとまったのかもしれない。
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アプローチの工夫もさることながら、本作は「東映発展感謝記念映画」という位置づけ<small>註01</small>の作品で、たいへん元気がある。
  
  
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全体がひじょうに優しく、丁寧に作られていて、本寸法の忠臣蔵ではない(だから、星一個欠いた)ものの「忠臣蔵が訴えたいこと」をうまいことまとめている。
 
全体がひじょうに優しく、丁寧に作られていて、本寸法の忠臣蔵ではない(だから、星一個欠いた)ものの「忠臣蔵が訴えたいこと」をうまいことまとめている。
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註01…この表現は、当時の「平凡別冊 オール東映スタア祭り」における、対談で千恵蔵が言っているのだが、会社がそう銘打ってるのか千恵蔵がふざけているのかは不明。
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「ほとんど我が社の俳優だけでキャストが組めるというのは、これはたいしたことですね。」
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2020年6月3日 (水) 16:08時点における版

作品概要
制作会社 東映
公開年度 1959年
内蔵助役 片岡千恵蔵
評価 4ツ星
役者絵:山形勲

前回の東映の忠臣蔵は、東映初の色彩映画だったが画面がワイドではなかった、原作付きの「赤穂浪士」。今回はオリジナル作品で、ワイド画面のカラー。

ふつうの映画なら14〜5ハイというセットの数が、本作は75ハイも組んだという。


吉良がチョンガーだったり、若者のはずの橋本平左衛門が病気のおじいさん(月形龍之介)だったり、浪士側から女間者(美空ひばり!)が出るので岡野金右衛門の絵図面取りが無かったり、橋本が序盤で切腹しちゃうので萱野三平はネタがかぶらないように病死になったりと、あっちこっちにちょいちょい独特のオリジナルなアレンジがあることが「忠臣蔵」の内容をおぼえたてのビギナーが見るといささかの混乱を来たす。

が、逆にすっかり忠臣蔵に慣れてから見ると自決する橋本の遺志を継いで娘のひばりが恋仲の金右衛門と祝言をあげてからスパイ活動に入るのは「山岡覚兵衛」や「金田屋お蘭」のお雛のバリエーションと気づくし、「義士伝」的な味付けはあちこちに心がけられていて、実はスピリットをハズしていない。

大正期にはすでにオーソドックスな「忠臣蔵」が「千篇一律」と冷評されてるのを見ると、ここらあたりで変わったアレンジでアプローチしようよ!ということにでも相談がまとまったのかもしれない。


アプローチの工夫もさることながら、本作は「東映発展感謝記念映画」という位置づけ註01の作品で、たいへん元気がある。


とはいえ一升枡の酒を一気飲みする大友柳太朗の安兵衛もうれしいし(のんべえヤス時代の旧友にエノケン!)、コメディリリーフの山形勲の不破数右衛門も良く、おなじみな人気者のキャラ立てにはそつなくファンの期待に答えている。

そう、ことキャラクターに関しては後年の「赤穂浪士」よりも、よほど各浪士たちの活躍が用意されている。

序盤、お家大変のとき、主だったメンバーがお隣さん同士で塀越しに声を掛け合ってニュースを確認するシーンがあるが、これは赤穂を地元とする印象付けに加えて、名前を言うことで誰が誰を演じてるかの説明もできる心憎い演出だ。

歌舞伎の仮名手本みたいにメンバーそれぞれにいろは四十七文字の札がぶらさがってるのがかわいいし、登場人物に対する愛を感じる。


全体がひじょうに優しく、丁寧に作られていて、本寸法の忠臣蔵ではない(だから、星一個欠いた)ものの「忠臣蔵が訴えたいこと」をうまいことまとめている。


註01…この表現は、当時の「平凡別冊 オール東映スタア祭り」における、対談で千恵蔵が言っているのだが、会社がそう銘打ってるのか千恵蔵がふざけているのかは不明。

「ほとんど我が社の俳優だけでキャストが組めるというのは、これはたいしたことですね。」



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片岡千恵蔵 出演, 中村錦之助 出演

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片岡千恵蔵 出演, 市川右太衛門 出演