「忠臣蔵1/47」の版間の差分
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悪い意味で優等生的な作品。 | 悪い意味で優等生的な作品。 | ||
− | + | 「これまでにない忠臣蔵」を目指すのも結構だし、おはなしはこざっぱりまとめてあるし、ところどころ斬新だし、スタッフやキャストは無難に仕事をこなして入るんだけど、トータルでは「忠臣蔵に対するこだわり」の無さだけを感じてしまう。独特の気合いは伝わってくるのだが、全編が「のっぺり」している。たとえるなら無難すぎて「思い出の足りない遠足」という感じがする。 | |
− | + | 「昔はそれで良かったかもしれないけど、現代ではこう演出しないと視聴者に主旨が通じない」的なアレンジには余計なものもあり、それが普遍的な忠臣蔵世界に逆に「安さ」を与えてしまった。手をつないでゴールする運動会や、怪獣を殺さないウルトラマンに通じるものがある。 | |
− | + | いつまでも同じ事をやってたってしょうがない、という意気込みで新しいココロミをするときに大事なのは、斬新なことをやることよりも、これまで扱われたテーマ性を自分ならどうやって脚色できるか、演出できるか、という地味な作業こそがクリエーターの腕の見せ所だと思う。 | |
+ | ストーリーをいじくっちゃったりキャラの性格を大胆に壊すことではない。それは「斬新」ではなく「デタラメ」になってしまう。デタラメをやるんだったら笑えなければいけない。本作はその両方がもうひとつ。 | ||
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+ | まず四十七士ってユニットは、かっこいいのもいれば無骨もいればバカもお笑いもいろいろいるのだが、本作品にはそういう個性が不在。おかげで全体のムードが「まったいら」。'''アソビが徹底的に無い。''' | ||
役者をそろえておきながらよくあれだけ極彩色豊かな「忠臣蔵」をこんだけ油を抜いて仕上げられたなと思う。 | 役者をそろえておきながらよくあれだけ極彩色豊かな「忠臣蔵」をこんだけ油を抜いて仕上げられたなと思う。 | ||
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キムタクって人は、ある意味安兵衛像に近いと思う。やるときはやるけど愛嬌たっぷりの人気者だ。たとえば糊屋のばあさんに研ナオコかなんかを当てて「おぃばばぁ!ちょ待ぁてよ!」ってやったらもう、安兵衛のイメージぴったりなのに、そうした持ち前の個性を殺してまで作り上げようとした人物像とはなんなのか、キャラが伝わってこない。 | キムタクって人は、ある意味安兵衛像に近いと思う。やるときはやるけど愛嬌たっぷりの人気者だ。たとえば糊屋のばあさんに研ナオコかなんかを当てて「おぃばばぁ!ちょ待ぁてよ!」ってやったらもう、安兵衛のイメージぴったりなのに、そうした持ち前の個性を殺してまで作り上げようとした人物像とはなんなのか、キャラが伝わってこない。 | ||
− | + | 忠臣蔵エピソードのおいしいところを全部安兵衛にやらせる「ありえねー構成」は、やり方によってはすごくバカバカしくなっておもしろくもなるだろうに、キムタクに見せ場を与える事以上のこだわりが無いから、単に各所をローテンションの若い侍がホワ〜ンとお使いをするだけになってしまってこれももったいない。とにかく「画面に映ってる」以上の木村拓哉を楽しめない。 | |
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− | + | カットにはところどころ印象的なものがある<最後とか。そういえば[[もりいくすお|あたし]]が泉岳寺の土産物屋の若女将さんとこの作品を話題にしたとき彼女は「キムタクがタクアン食べてましたネ」とだけ感想を言ってたし、'''なんかしらは残る'''。 | |
− | + | でもせっかく元禄のスターを平成のスターがやるんだから、そんなチョボチョボした名場面(?)じゃあ、いかにせん、もったいない。勝負下着ばっかり気合い入れちゃって、中身が伴わない夜って感じである。そう、形ばかりのかっこよさがいかにも浅薄。 | |
2009年9月6日 (日) 15:44時点における版
作品概要 | |
制作会社 | フジテレビ |
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公開年度 | 2001年 |
内蔵助役 | 佐藤浩市 |
評価 |
主役は木村拓哉の堀部安兵衛。
悪い意味で優等生的な作品。
「これまでにない忠臣蔵」を目指すのも結構だし、おはなしはこざっぱりまとめてあるし、ところどころ斬新だし、スタッフやキャストは無難に仕事をこなして入るんだけど、トータルでは「忠臣蔵に対するこだわり」の無さだけを感じてしまう。独特の気合いは伝わってくるのだが、全編が「のっぺり」している。たとえるなら無難すぎて「思い出の足りない遠足」という感じがする。
「昔はそれで良かったかもしれないけど、現代ではこう演出しないと視聴者に主旨が通じない」的なアレンジには余計なものもあり、それが普遍的な忠臣蔵世界に逆に「安さ」を与えてしまった。手をつないでゴールする運動会や、怪獣を殺さないウルトラマンに通じるものがある。
いつまでも同じ事をやってたってしょうがない、という意気込みで新しいココロミをするときに大事なのは、斬新なことをやることよりも、これまで扱われたテーマ性を自分ならどうやって脚色できるか、演出できるか、という地味な作業こそがクリエーターの腕の見せ所だと思う。
ストーリーをいじくっちゃったりキャラの性格を大胆に壊すことではない。それは「斬新」ではなく「デタラメ」になってしまう。デタラメをやるんだったら笑えなければいけない。本作はその両方がもうひとつ。
まず四十七士ってユニットは、かっこいいのもいれば無骨もいればバカもお笑いもいろいろいるのだが、本作品にはそういう個性が不在。おかげで全体のムードが「まったいら」。アソビが徹底的に無い。
役者をそろえておきながらよくあれだけ極彩色豊かな「忠臣蔵」をこんだけ油を抜いて仕上げられたなと思う。
そもそも「安兵衛」の物語と言えばもう底抜けに明るく、この江戸っ子の人気者は破天荒でユニークなはずなのに、本編ではまるっきりオスマシ&ツツマシヤカ。
キムタクって人は、ある意味安兵衛像に近いと思う。やるときはやるけど愛嬌たっぷりの人気者だ。たとえば糊屋のばあさんに研ナオコかなんかを当てて「おぃばばぁ!ちょ待ぁてよ!」ってやったらもう、安兵衛のイメージぴったりなのに、そうした持ち前の個性を殺してまで作り上げようとした人物像とはなんなのか、キャラが伝わってこない。
忠臣蔵エピソードのおいしいところを全部安兵衛にやらせる「ありえねー構成」は、やり方によってはすごくバカバカしくなっておもしろくもなるだろうに、キムタクに見せ場を与える事以上のこだわりが無いから、単に各所をローテンションの若い侍がホワ〜ンとお使いをするだけになってしまってこれももったいない。とにかく「画面に映ってる」以上の木村拓哉を楽しめない。
カットにはところどころ印象的なものがある<最後とか。そういえばあたしが泉岳寺の土産物屋の若女将さんとこの作品を話題にしたとき彼女は「キムタクがタクアン食べてましたネ」とだけ感想を言ってたし、なんかしらは残る。
でもせっかく元禄のスターを平成のスターがやるんだから、そんなチョボチョボした名場面(?)じゃあ、いかにせん、もったいない。勝負下着ばっかり気合い入れちゃって、中身が伴わない夜って感じである。そう、形ばかりのかっこよさがいかにも浅薄。
コレうまくいってれば、三国志や新撰組にくらべて「萌えキャラ」不在といわれている「忠臣蔵」の面目躍如になり得たと思います。
最初、星一個だったんだけど、何度か見てると、すごくマジメにやろうという姿勢が見え隠れいたしまして、どっか憎めないので星二つ。