「忠臣蔵・女たち・愛」の版間の差分

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{{Cinema|制作=TBS|公開=1987|内蔵助=丹波哲郎|星=3|頃=}}
 
{{Cinema|制作=TBS|公開=1987|内蔵助=丹波哲郎|星=3|頃=}}
  
橋田壽賀子の「女」忠臣蔵シリーズ(?)第2弾。[[日曜劇場 女たちの忠臣蔵〜いのち燃ゆる時〜|前作]]があまりに高視聴率だったから制作側はもっと早く第二弾を欲しがったのではないかと推測するが、橋田はきっと「おしん(NHK)」で忙しかったんで本作まで7年も空いたんじゃなかろうか。(ちなみにこの二年後「春日局」)
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橋田壽賀子の「女」忠臣蔵シリーズ(?)第2弾。
  
さっそく[[杉野十平次]]の妹役に小林綾子がキャスティングされているが、やっぱこの人(の少女時代)はちょっと足が不自由な役をやるだけで不憫に見えて涙を誘う威力があります。
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[[東芝日曜劇場 女たちの忠臣蔵〜いのち燃ゆる時〜|前作]]があまりに高視聴率だったから制作側はもっと早く第二弾を欲しがったのではないかと推測するが、橋田はきっと「おしん(NHK)」で忙しかったんで本作まで7年も空いたんじゃなかろうか。(ちなみにこの二年後「春日局」)
  
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さっそく[[杉野十平次]]の妹役に小林綾子(NHK連続テレビ小説「おしん」主役)がキャスティングされているが、やっぱこの人(の少女時代)はちょっと足が不自由な役をやるだけで不憫に見えて涙を誘う威力があります。(名犬ラッシーの演技が同情を誘うように?)
  
前作に比べると、なますのように斬られて泥だらけで死んでいくような壮絶な女の生き様は無くなってるのが、70年代から80年代という時代の流れを感じさせる。離縁された[[大石りく]]が江戸の[[大石内蔵助|内蔵助]]に会いにきちゃうところは共通している。
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前作に比べると、なますのように斬られて泥だらけで死んでいくような壮絶な女の生き様は無くなってるのが、70年代から80年代という時代の流れを感じさせる。離縁された[[大石りく]]が江戸の[[大石内蔵助|内蔵助]]に会いにきちゃうところだけネタがかぶってる。
  
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また、前作は史実や講談でおなじみのネタを取り入れアレンジしているが、今回はほとんどがオリジナルストーリー。
  
前作で登場した浪士とエピソードがかぶらない配慮がされており、そのせいか、ほかではクローズアップされない[[吉田沢右衛門]]や[[矢田五郎右衛門]]などといった人物に橋田オリジナルの逸話が加えられている。
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前作で登場した浪士とエピソードがかぶらない配慮もされており、そのせいか、ほかの映画やドラマではクローズアップされない[[吉田沢右衛門]]や[[矢田五郎右衛門]]などといった人物に橋田オリジナルの逸話が加えられている。
  
  
[[徳川綱吉]]をカツシンが演じているのだが、彼のシーンだけガラッと空気が変わってしまう。もう'''晩年の彼の演技はお茶の間向きではない'''。他人とのカラミは適当だし、自由すぎる。カツシンファンにはたまらない独走。
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前半と後半に別れた二部構成の形をとっているが、密度の濃い前半に比べ後半は「いい話」の連続で役者の演技も申し分ないのだが、いささか起伏に欠け、単調に感じる。ただ、当時のお茶の間はそれでも良かったのかもしれない。
  
彼(綱吉)がいっぱい[[狆|チン]]を飼ってるのだが、今まで見た忠臣蔵では'''もっとも一度にフレームインしているチンの数の多い作品'''だ。(後半でカツシンにぶったたかれるチンもいる)
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さて、[[徳川綱吉]]をカツシンが演じているのだが、彼のシーンだけガラッと空気が変わってしまう。もう'''晩年の彼の演技はお茶の間向きではない'''。キッカケが自由な感じなのでカメラも音声も、カツシンが急になにをしでかすか技術さんがビクビクしてる感じがもろに伝わってくる。
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煙に巻かれた林与一氏がカツシンのセリフに自分のセリフをかぶせてしまうシーンがあり、カツシンがあまりにぼそぼそ言ってるので聞き取れず、'''勘で'''キッカケを読んだのかなと想像していたが、09年12月、林氏ご本人にお話を伺う機会があったので聴いたら「勝さんが急に、勝手にいろいろやり出す」のでどぎまぎしていらっしゃったようだ。
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しまいにカツシン(綱吉)がチンを棒でぶったたき始める(段取りに無いこと)ので林氏は呆気にとられ、あとで「生類憐れみの令を作った人が、いいんですか」と聞くと「オレが作った法なんだから俺はナニをやったっていいんだ」とカツ節が返ってきたという。林氏は「いい顔してたよ」とほめられたそうだが、「あたしはほんとうに驚いてたのであって、あの顔は芝居じゃない」とおっしゃっておられました。
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これが単品なら4っつぼしですが、さらに良い「女たちの忠臣蔵」と同点というわけにはいかないので星3っつ。
 
これが単品なら4っつぼしですが、さらに良い「女たちの忠臣蔵」と同点というわけにはいかないので星3っつ。
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== 関連作品 ==
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* [[東芝日曜劇場 女たちの忠臣蔵〜いのち燃ゆる時〜|女たちの忠臣蔵]](同じ原作者のぜんぜん違うストーリー)
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[[Category:くすおの忠臣蔵作品評|1987]]

2023年1月23日 (月) 07:32時点における最新版

作品概要
制作会社 TBS
公開年度 1987年
内蔵助役 丹波哲郎
評価 3ツ星


橋田壽賀子の「女」忠臣蔵シリーズ(?)第2弾。

前作があまりに高視聴率だったから制作側はもっと早く第二弾を欲しがったのではないかと推測するが、橋田はきっと「おしん(NHK)」で忙しかったんで本作まで7年も空いたんじゃなかろうか。(ちなみにこの二年後「春日局」)

さっそく杉野十平次の妹役に小林綾子(NHK連続テレビ小説「おしん」主役)がキャスティングされているが、やっぱこの人(の少女時代)はちょっと足が不自由な役をやるだけで不憫に見えて涙を誘う威力があります。(名犬ラッシーの演技が同情を誘うように?)

前作に比べると、なますのように斬られて泥だらけで死んでいくような壮絶な女の生き様は無くなってるのが、70年代から80年代という時代の流れを感じさせる。離縁された大石りくが江戸の内蔵助に会いにきちゃうところだけネタがかぶってる。

また、前作は史実や講談でおなじみのネタを取り入れアレンジしているが、今回はほとんどがオリジナルストーリー。

前作で登場した浪士とエピソードがかぶらない配慮もされており、そのせいか、ほかの映画やドラマではクローズアップされない吉田沢右衛門矢田五郎右衛門などといった人物に橋田オリジナルの逸話が加えられている。


前半と後半に別れた二部構成の形をとっているが、密度の濃い前半に比べ後半は「いい話」の連続で役者の演技も申し分ないのだが、いささか起伏に欠け、単調に感じる。ただ、当時のお茶の間はそれでも良かったのかもしれない。


さて、徳川綱吉をカツシンが演じているのだが、彼のシーンだけガラッと空気が変わってしまう。もう晩年の彼の演技はお茶の間向きではない。キッカケが自由な感じなのでカメラも音声も、カツシンが急になにをしでかすか技術さんがビクビクしてる感じがもろに伝わってくる。

煙に巻かれた林与一氏がカツシンのセリフに自分のセリフをかぶせてしまうシーンがあり、カツシンがあまりにぼそぼそ言ってるので聞き取れず、勘でキッカケを読んだのかなと想像していたが、09年12月、林氏ご本人にお話を伺う機会があったので聴いたら「勝さんが急に、勝手にいろいろやり出す」のでどぎまぎしていらっしゃったようだ。

しまいにカツシン(綱吉)がチンを棒でぶったたき始める(段取りに無いこと)ので林氏は呆気にとられ、あとで「生類憐れみの令を作った人が、いいんですか」と聞くと「オレが作った法なんだから俺はナニをやったっていいんだ」とカツ節が返ってきたという。林氏は「いい顔してたよ」とほめられたそうだが、「あたしはほんとうに驚いてたのであって、あの顔は芝居じゃない」とおっしゃっておられました。

いっぱいチンを飼ってるのだが10匹ほどもおり、今まで見た忠臣蔵ではもっとも一度にフレームインしているチンの数の多い作品だ。


しっかしあたしが言うのもおこがましいんですが、この橋田さんってえ人は本当に構成がうまい。アイデアが素晴らしい。

これが単品なら4っつぼしですが、さらに良い「女たちの忠臣蔵」と同点というわけにはいかないので星3っつ。

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