「元禄太平記」の版間の差分

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{{Cinema|制作=NHK|公開=1975|内蔵助=江守徹|=2|頃=}}
| colspan="2" align="center" |'''作品概要'''
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[[画像:yanagisawa_s.jpg|thumb|役者絵:石坂浩二]]
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! 制作会社
 
| NHK
 
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! 公開年度
 
| 1975年
 
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! 内蔵助役
 
| 江守徹
 
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! 評価
 
| ★★
 
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主役は将軍の側用人、[[柳沢吉保|柳沢保明]](石坂浩二)。
 
主役は将軍の側用人、[[柳沢吉保|柳沢保明]](石坂浩二)。
  
丁寧でちゃんとした構成。幕府側の視点を重く置いたドラマで、そっちは目新しいが「忠臣蔵」部分は意外にオーソドックス。
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丁寧でちゃんとした構成。幕府側の視点を重く置いたドラマで、「忠臣蔵」部分は無難に仕上げている。(<あくまで総集編のはなし)<small>※註01</small>
  
刃傷のきっかけは柳沢が吉良と塩の雑談をした時、その言葉の裏の裏まで読んだ吉良が「塩田を差し出せ」と言ってる暗喩と勘違いし、浅野に転封願い(てんぽうねがい)を迫ったことから関係が悪化する。リイド社のマンガが似てる。
 
  
やはり魅力的に描かれてるのは野望に燃える柳沢の活躍のほうで、彼が将軍のためにどんだけ働いてるかを見てると敵討ちが当然「サブ」に見えてしまう。だから内蔵助の影がはなはだ薄い。
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刃傷のきっかけは柳沢が吉良と塩の雑談をした時、その言葉の裏の裏まで読んだ吉良が「塩田を差し出せ」と言ってる暗喩と勘違いし、浅野に転封願い(てんぽうねがい)を迫ったことから関係が悪化する。
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やはり魅力的に描かれてるのは立身出世の野望に燃える柳沢の活躍のほうで、彼が将軍のためにどんだけ働いてるかの構成なので敵討ちの「サブ度」は高くなり、内蔵助の影がはなはだ薄い。
  
 
見てるのが「総集編」だから柳沢側によけいウエイトが置かれて編集されているとも言えるが、ほかの作品に比べても柳沢の討ち入りに対する首の突っ込み方はうすく、はっきりと「眼中に無い」的なことを紀伊国屋文左衛門にいうシーンさえある。
 
見てるのが「総集編」だから柳沢側によけいウエイトが置かれて編集されているとも言えるが、ほかの作品に比べても柳沢の討ち入りに対する首の突っ込み方はうすく、はっきりと「眼中に無い」的なことを紀伊国屋文左衛門にいうシーンさえある。
  
だから定番では間者を放ったりして浪士の動向を探ったりするが、そういうこともしない。
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だから定番では、柳沢は間者を放ったりして浪士の動向を探ったりするが、そういうこともしない。
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討ち入り前後も江戸城内では彼抜きでもろもろ審判が進み(ま、これ実際そういうところがあったらしいが)、完全に蚊帳の外。かわりに架空のキャラ、柳沢の甥・柳沢兵庫(竹脇無我)なる人物が浪士とのコンタクトが密である。
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とはいえ、時代劇専門チャンネルで1話(#18刃傷松の廊下=唯一現存する回)だけ放送したのを見てみると、目付が内匠頭の遺言を途中で削除するなどの斬新なシーンなどもあり、ちゃんとこの作品を評価するなら、やっぱり全部通して見なくちゃ、ではある。
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幕府系に比べて四十七士のキャスティングが薄い。関口〜フレンドパーク〜宏が[[堀部安兵衛]]というのはどうでしょう…?
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以前泉岳寺に行ったときどっかのおばさんが安兵衛の墓前で「関口宏が演ってたわねえ」と言ってるのを聞いて「あり得ねえだろ!」と心の中で突っ込んだが、おばさんが正しかった。関口氏ご本人は「史上最弱の堀部安兵衛」とおっしゃってます。
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討ち入り装束が伝えられるものによく似ており、いろいろとってもちゃんとしてるが、柳沢物語なので「忠臣蔵」を楽しむという感じでもなく遠慮の★二つ。
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※註01…本作品は総集編と別に1話しかNHKがVTRを持っていなかったとされているが、江守徹さん(本作の内蔵助)が個人的に、全話を録画しているという噂があった。この噂はやがて、「ご自分の出演している回のぶんしか持っていない」というふうに変わっていった。真相不明。
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NHKさんの[http://www.nhk.or.jp/archives/hakkutsu/ 「NHK番組発掘プロジェクト」]で大々的に捜索をしている。関係者が石坂浩二さんにビデオのことを伺うと「持ってないよっ笑」というお答えだったという。
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本作発掘プロジェクト始動から4年ほど経って、早大や岡田茉莉子さんによって何本かが見つかったが、2019年末、[https://www.nhk.or.jp/archives/hakkutsu/news/detail254.html?fbclid=IwAR3qLCXk_49zNOub4f6q0WryONe-yv1eH1sx0-ku0iS7dqC2fgaqdLpZbpQ 歌手の三善英史さんが41本持ってらした]ことが判明した。
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1995年に同じ原作のドラマが「'''オールスター時代劇 元禄太平記 忠臣蔵 討入りの助っ人たち 東映太秦映画村開村二十周年記念'''」というとてつもない長いタイトルでテレビ朝日で放送されたときは、柳沢兵庫(松平健)を主役にアレンジし、桃太郎侍のような、庶民に近いところにいる権力者の親戚を楽しく描いていた。竹脇無我が[[脇坂淡路守]]役で出てくるなどサービスが良かった。
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ひじょうに珍しいことに、四十七士が討ち入りの時に陣太鼓もたたかず口上も近所への挨拶もせず、黙って屋敷に襲いかかるので完全な夜襲になってしまい、ちょっとこわかった(内蔵助は里見浩太朗)。
  
討ち入り前後も江戸城内では彼抜きでもろもろ審判が進み(ま、これ実際そういうところがあったらしいが)、完全に蚊帳の外。かわりに架空のキャラ、柳沢の弟柳沢兵庫(竹脇無我)なる人物が浪士とのコンタクトが密である。
 
  
とはいえ、そもそも幕府系に比べて四十七士のキャスティングも薄い。関口宏が堀部安兵衛というのはどうでしょう…?
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また、1980年にジャンプスーパーコミックスからリリースされた秋元治の「新元禄太平記」は忠臣蔵や柳沢吉保とはなにひとつ関係のないドタバタ時代劇漫画であります。
  
以前泉岳寺に行ったときどっかのおばさんが安兵衛の墓前で「関口宏が演ってたわねえ」と言ってるのを聞いて「あり得ねえだろ!」と心の中で突っ込んだが、おばさんが正しかった。
 
  
とってもちゃんとしてるが、柳沢物語なので「忠臣蔵」を楽しむという感じでもなく遠慮の★二つ。
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== 関連作品 ==
 
== 関連作品 ==

2019年12月21日 (土) 18:16時点における版

作品概要
制作会社 NHK
公開年度 1975年
内蔵助役 江守徹
評価 2ツ星
役者絵:石坂浩二

主役は将軍の側用人、柳沢保明(石坂浩二)。

丁寧でちゃんとした構成。幕府側の視点を重く置いたドラマで、「忠臣蔵」部分は無難に仕上げている。(<あくまで総集編のはなし)※註01


刃傷のきっかけは柳沢が吉良と塩の雑談をした時、その言葉の裏の裏まで読んだ吉良が「塩田を差し出せ」と言ってる暗喩と勘違いし、浅野に転封願い(てんぽうねがい)を迫ったことから関係が悪化する。

やはり魅力的に描かれてるのは立身出世の野望に燃える柳沢の活躍のほうで、彼が将軍のためにどんだけ働いてるかの構成なので敵討ちの「サブ度」は高くなり、内蔵助の影がはなはだ薄い。

見てるのが「総集編」だから柳沢側によけいウエイトが置かれて編集されているとも言えるが、ほかの作品に比べても柳沢の討ち入りに対する首の突っ込み方はうすく、はっきりと「眼中に無い」的なことを紀伊国屋文左衛門にいうシーンさえある。

だから定番では、柳沢は間者を放ったりして浪士の動向を探ったりするが、そういうこともしない。

討ち入り前後も江戸城内では彼抜きでもろもろ審判が進み(ま、これ実際そういうところがあったらしいが)、完全に蚊帳の外。かわりに架空のキャラ、柳沢の甥・柳沢兵庫(竹脇無我)なる人物が浪士とのコンタクトが密である。

とはいえ、時代劇専門チャンネルで1話(#18刃傷松の廊下=唯一現存する回)だけ放送したのを見てみると、目付が内匠頭の遺言を途中で削除するなどの斬新なシーンなどもあり、ちゃんとこの作品を評価するなら、やっぱり全部通して見なくちゃ、ではある。


幕府系に比べて四十七士のキャスティングが薄い。関口〜フレンドパーク〜宏が堀部安兵衛というのはどうでしょう…?

以前泉岳寺に行ったときどっかのおばさんが安兵衛の墓前で「関口宏が演ってたわねえ」と言ってるのを聞いて「あり得ねえだろ!」と心の中で突っ込んだが、おばさんが正しかった。関口氏ご本人は「史上最弱の堀部安兵衛」とおっしゃってます。


討ち入り装束が伝えられるものによく似ており、いろいろとってもちゃんとしてるが、柳沢物語なので「忠臣蔵」を楽しむという感じでもなく遠慮の★二つ。


※註01…本作品は総集編と別に1話しかNHKがVTRを持っていなかったとされているが、江守徹さん(本作の内蔵助)が個人的に、全話を録画しているという噂があった。この噂はやがて、「ご自分の出演している回のぶんしか持っていない」というふうに変わっていった。真相不明。

NHKさんの「NHK番組発掘プロジェクト」で大々的に捜索をしている。関係者が石坂浩二さんにビデオのことを伺うと「持ってないよっ笑」というお答えだったという。

本作発掘プロジェクト始動から4年ほど経って、早大や岡田茉莉子さんによって何本かが見つかったが、2019年末、歌手の三善英史さんが41本持ってらしたことが判明した。




1995年に同じ原作のドラマが「オールスター時代劇 元禄太平記 忠臣蔵 討入りの助っ人たち 東映太秦映画村開村二十周年記念」というとてつもない長いタイトルでテレビ朝日で放送されたときは、柳沢兵庫(松平健)を主役にアレンジし、桃太郎侍のような、庶民に近いところにいる権力者の親戚を楽しく描いていた。竹脇無我が脇坂淡路守役で出てくるなどサービスが良かった。

ひじょうに珍しいことに、四十七士が討ち入りの時に陣太鼓もたたかず口上も近所への挨拶もせず、黙って屋敷に襲いかかるので完全な夜襲になってしまい、ちょっとこわかった(内蔵助は里見浩太朗)。


また、1980年にジャンプスーパーコミックスからリリースされた秋元治の「新元禄太平記」は忠臣蔵や柳沢吉保とはなにひとつ関係のないドタバタ時代劇漫画であります。



関連作品

腕におぼえあり