「不破数右衛門」の版間の差分

提供: Kusupedia
移動先: 案内検索
 
(同じ利用者による、間の31版が非表示)
1行目: 1行目:
不破数右衛門 【ふわ かずえもん】…ワイルドキャラ。
+
[[画像:Fuwa yamagata.jpg|thumb|役者絵:山形勲]][[画像:JJ sony chiba.jpg|thumb|役者絵:千葉真一]]
  
豪放磊落にして愉快に描かれることも多い。
+
[[Category:四十七士|ふわかずえもん]]
  
「おつむがたりない」みたいに言われることも(三船の「大忠臣蔵」)。豪傑なわりに「泣き男」とあだ名される涙もろさも。
 
  
現役時分、墓を掘り起こして死体を刀の試し切りしてるのをとがめられてリストラされる(そのエピソードがコンセプトに影響してるのか、彼が猟奇殺人する歌舞伎「盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)」というのがある)。
+
不破数右衛門 【ふわ かずえもん】…ワイルドキャラ。一徹短慮の粗忽者(講談)。生まれもってのがさつもの([[元禄忠臣蔵]])。
 +
 
 +
'''浅野家をリストラされている'''浪人。お家の大変を聞いて赤穂城まで鎧櫃(よろいびつ)をしょって駆けつける。
 +
 
 +
豪放磊落にして愉快に描かれることも多い(「[[忠臣蔵 桜花の巻 菊花の巻]]」の山形勲は素敵)。
 +
 
 +
昔はおっちょこちょいに描かれるコトが多く「ばか」「おつむがたりない」みたいに言われることも(三船の「[[大忠臣蔵(NET)|大忠臣蔵]]」)。豪傑なわりに「泣き男」とあだ名される涙もろさも(「[[忠臣蔵 桜花の巻 菊花の巻]]」など)。
 +
 
 +
後年は勝手に内蔵助のボディガード的に立ち回るクールな一面も見せている。
 +
 
 +
 
 +
== リストラの原因 ==
 +
 
 +
唯一の趣味が刀剣類。ある日、刀屋・杉本屋から買った無名の貞宗を試したくて、乞食が沢山いるところに行って、そのひとりに「腰も抜けて三食も心にまかせないんじゃ生きてたってしょうがないだろ。早く死んで生まれ変わったほうがいいんじゃないか」と声を掛ける。冗談だと思って乞食が「さようでございます。早く死にたいですわ」と答えると数右衛門が「そうか!この一刀を試したいんで殺してやろう」とホントに抜いたんでイザリの乞食は立ち上がって一目散に逃げた。(この噂が乞食のあいだで評判になり、赤穂城下は乞食の種切れになる)
 +
 
 +
その後、仲間(ちゅうげん)・文助が「お化けが出る」と言って仕方がないので、原因となってる、最近死んだその知人とやらの墓を掘り起こして死体を細切れに斬りまくった。数「コレならもうお化けになってでやしまい」文「こう細かいと、毎日ちょっとずつ来るんじゃないでしょうか」
 +
 
 +
掘り起こす際に使ったクワから足が付いて数右衛門は棺場やぶりの重罪でとがめられるが、内匠頭のお気に入りだったので死罪にした体裁で彼を追放するに止める。
 +
 
 +
 
 +
別のエピソードでは、藩をクビになって鷹取峠で山賊に成り下がった元同僚・望月庄次郎を切り捨てて、城下の知り合い・筆屋長次郎から盗んだオカネを取り返している様子を見とがめた家来の小助が「盗人の上前ハネ」とののしってゆすってきたのでコレも斬り捨て、そのカドで追放になるというパターンもある。(たかとりとうげは" 高取峠 "が正しい)
 +
 
 +
 
 +
この死人の試し切りや殺人、大変後お城に駆けつるために住んでた加古川をあとにする際、正逆(まさか)の役に立つまじと幼少の我が子を殺してから出かけてくるなどのバイオレンスな講談が影響してか、彼が猟奇殺人する歌舞伎の出し物に「[[盟三五大切]](かみかけてさんごたいせつ)」というのがある。
 +
 
 +
 
 +
== 討ち入りに参加 ==
 +
 
 +
殿様刃傷&切腹のニュースを持った早駕籠と地元・加古川の西道で偶然ばったりでくわした数右衛門「もし[[片岡源五右衛門]]殿ではござらぬか!?」(<ゲンゴが早駕籠メンバーの講談がしばしばある)。さっそく赤穂城へ出向こうとする。妻は夫の勇気を増すがために自害。子供も殺してしまう。もろもろの事情を聞いた内蔵助は妻子の志を不憫に思い、殿様に変わって帰参を許す。
 +
 
 +
討ち入りメンバーの加盟については病気の妻が足手まといにならないように自害する際、「夫をメンバーに加えてくれ」と内蔵助に遺書を残すというアプローチもある(浪曲)。
 +
 
 +
奥さんに関しては、子供と一緒に死んじゃう方は[[村松喜兵衛]]の娘・お國(くに)。また、自害する際メンバー加盟の嘆願書を書くのがお藤と、いろいろ。
 +
 
 +
 
 +
映画やテレビでは帰参のエピソードはさまざまだが、だいたい遠くから内蔵助を見守ってチャンスをうかがい、刺客に狙われる内蔵助をボディガードして許されたり、みたいなイメージが強い。一時期オファーが殺到してた古田求さんの脚本では、泉岳寺の殿様の墓前で土下座して内蔵助に許してもらっている。
 +
 
 +
 
 +
ーーー
 +
 
 +
元禄15年2月、江戸は山村座というところで「東山栄華の舞台」という芝居やってて「器用にこないだの刃傷事件を芝居に盛り込んだものだなあ」と言う評判を聞いたので数右衛は芝居見物。見てたら[[吉良上野介|上野介]]役の役者にキレて客席から舞台に飛び上がり[[梶川与惣兵衛]]役の役者を殴打。上野介役に「慮外千万!」と斬りかかる。
 +
 
 +
客「おもしろい芝居ですなぁ。今日の幕は一人役者が増えましたなぁ」
 +
 
 +
やがて数右衛門はクールダウンして楽屋で謝るが、ちまたでは「あの飛び入りはきっと赤穂の浪人だ。きっと芝居がリアルだから思わずあんなことを」とまた評判となる。
 +
 
 +
(「東山栄華舞台」は実際に討ち入り前に興行されたおしばい。世間の浅野への同情が伺われるが作者も内容も記録が残ってない。)
  
刃傷事件後、懇願して義盟に加わる。
 
  
刃傷芝居を見てたら上野介役の役者にキレて客席から舞台に殴り掛かった。
 
  
 
討ち入りでは裏門係だったがいても立ってもいられず渦中に飛び込み最もめざましい働きをしたと伝わる。
 
討ち入りでは裏門係だったがいても立ってもいられず渦中に飛び込み最もめざましい働きをしたと伝わる。
  
東映「赤穂城断絶」ではクローズアップされ、千葉真一が演じて相当カッコよかった〜。
+
 
 +
東映「[[赤穂城断絶]]」ではクローズアップされ、千葉真一が演じて相当カッコよかった〜。
 +
 
 +
「[[峠の群像]]」では一本気で不器用だが内蔵助にピッタリくっついて行動する用心棒のような存在だった(小林薫)。
 +
 
 +
「[[編笠十兵衛]]」では奥さんが「夫は下着を10日も20日も取り替えず、歯も磨かず顔も洗わない」と、不潔漢であるとコメントしている(若林豪)。
 +
 
 +
 
  
 
享年34。
 
享年34。
 +
 +
 +
== 関連作品 ==
 +
 +
*[[盟三五大切]](歌舞伎)
 +
 +
*[[韋駄天数右衛門]](宝塚キネマ)1933
 +
 +
*[[赤穂義士(大映)]]1954
 +
 +
*[[修羅]](ATG)1971

2017年10月29日 (日) 14:11時点における版

役者絵:山形勲
役者絵:千葉真一


不破数右衛門 【ふわ かずえもん】…ワイルドキャラ。一徹短慮の粗忽者(講談)。生まれもってのがさつもの(元禄忠臣蔵)。

浅野家をリストラされている浪人。お家の大変を聞いて赤穂城まで鎧櫃(よろいびつ)をしょって駆けつける。

豪放磊落にして愉快に描かれることも多い(「忠臣蔵 桜花の巻 菊花の巻」の山形勲は素敵)。

昔はおっちょこちょいに描かれるコトが多く「ばか」「おつむがたりない」みたいに言われることも(三船の「大忠臣蔵」)。豪傑なわりに「泣き男」とあだ名される涙もろさも(「忠臣蔵 桜花の巻 菊花の巻」など)。

後年は勝手に内蔵助のボディガード的に立ち回るクールな一面も見せている。


リストラの原因

唯一の趣味が刀剣類。ある日、刀屋・杉本屋から買った無名の貞宗を試したくて、乞食が沢山いるところに行って、そのひとりに「腰も抜けて三食も心にまかせないんじゃ生きてたってしょうがないだろ。早く死んで生まれ変わったほうがいいんじゃないか」と声を掛ける。冗談だと思って乞食が「さようでございます。早く死にたいですわ」と答えると数右衛門が「そうか!この一刀を試したいんで殺してやろう」とホントに抜いたんでイザリの乞食は立ち上がって一目散に逃げた。(この噂が乞食のあいだで評判になり、赤穂城下は乞食の種切れになる)

その後、仲間(ちゅうげん)・文助が「お化けが出る」と言って仕方がないので、原因となってる、最近死んだその知人とやらの墓を掘り起こして死体を細切れに斬りまくった。数「コレならもうお化けになってでやしまい」文「こう細かいと、毎日ちょっとずつ来るんじゃないでしょうか」

掘り起こす際に使ったクワから足が付いて数右衛門は棺場やぶりの重罪でとがめられるが、内匠頭のお気に入りだったので死罪にした体裁で彼を追放するに止める。


別のエピソードでは、藩をクビになって鷹取峠で山賊に成り下がった元同僚・望月庄次郎を切り捨てて、城下の知り合い・筆屋長次郎から盗んだオカネを取り返している様子を見とがめた家来の小助が「盗人の上前ハネ」とののしってゆすってきたのでコレも斬り捨て、そのカドで追放になるというパターンもある。(たかとりとうげは" 高取峠 "が正しい)


この死人の試し切りや殺人、大変後お城に駆けつるために住んでた加古川をあとにする際、正逆(まさか)の役に立つまじと幼少の我が子を殺してから出かけてくるなどのバイオレンスな講談が影響してか、彼が猟奇殺人する歌舞伎の出し物に「盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)」というのがある。


討ち入りに参加

殿様刃傷&切腹のニュースを持った早駕籠と地元・加古川の西道で偶然ばったりでくわした数右衛門「もし片岡源五右衛門殿ではござらぬか!?」(<ゲンゴが早駕籠メンバーの講談がしばしばある)。さっそく赤穂城へ出向こうとする。妻は夫の勇気を増すがために自害。子供も殺してしまう。もろもろの事情を聞いた内蔵助は妻子の志を不憫に思い、殿様に変わって帰参を許す。

討ち入りメンバーの加盟については病気の妻が足手まといにならないように自害する際、「夫をメンバーに加えてくれ」と内蔵助に遺書を残すというアプローチもある(浪曲)。

奥さんに関しては、子供と一緒に死んじゃう方は村松喜兵衛の娘・お國(くに)。また、自害する際メンバー加盟の嘆願書を書くのがお藤と、いろいろ。


映画やテレビでは帰参のエピソードはさまざまだが、だいたい遠くから内蔵助を見守ってチャンスをうかがい、刺客に狙われる内蔵助をボディガードして許されたり、みたいなイメージが強い。一時期オファーが殺到してた古田求さんの脚本では、泉岳寺の殿様の墓前で土下座して内蔵助に許してもらっている。


ーーー

元禄15年2月、江戸は山村座というところで「東山栄華の舞台」という芝居やってて「器用にこないだの刃傷事件を芝居に盛り込んだものだなあ」と言う評判を聞いたので数右衛は芝居見物。見てたら上野介役の役者にキレて客席から舞台に飛び上がり梶川与惣兵衛役の役者を殴打。上野介役に「慮外千万!」と斬りかかる。

客「おもしろい芝居ですなぁ。今日の幕は一人役者が増えましたなぁ」

やがて数右衛門はクールダウンして楽屋で謝るが、ちまたでは「あの飛び入りはきっと赤穂の浪人だ。きっと芝居がリアルだから思わずあんなことを」とまた評判となる。

(「東山栄華舞台」は実際に討ち入り前に興行されたおしばい。世間の浅野への同情が伺われるが作者も内容も記録が残ってない。)


討ち入りでは裏門係だったがいても立ってもいられず渦中に飛び込み最もめざましい働きをしたと伝わる。


東映「赤穂城断絶」ではクローズアップされ、千葉真一が演じて相当カッコよかった〜。

峠の群像」では一本気で不器用だが内蔵助にピッタリくっついて行動する用心棒のような存在だった(小林薫)。

編笠十兵衛」では奥さんが「夫は下着を10日も20日も取り替えず、歯も磨かず顔も洗わない」と、不潔漢であるとコメントしている(若林豪)。


享年34。


関連作品