「超忠臣蔵」を10倍楽しく見る方法

提供: Kusupedia
2012年3月14日 (水) 14:16時点におけるKusuo (トーク | 投稿記録)による版 (第4話 「里げしき」(3分30秒<本編))

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 この度は「まんが超忠臣蔵」をお楽しみいただきましてありがとうございます。


 意味がわからんというお声をほうぼうから頂戴いたしましたのですが、

とるにたらない作品ですので「それでもかまわん」とお答えいたしていたのでありますが、

もしも元ネタを知ってたら、一層お楽しみいただけるのではないかと思いまして、

このたびこちらに解説コーナーを設ける運びとなりました。


 デタラメに登場しているかのように見える、各キャラクターは意外に史実上の登場人物だったり講談の人気者です。

「そんなに書くことがあんのかよ!」というほどオマージュやパロディが詰まっております。

なにとぞ諸君ご愛読のほどを願いまする。そして、あらためてアニメをお楽しみくださいませ。


 まず、主題曲はもりいのオリジナルですが三船敏郎の「大忠臣蔵」のオマージュでもあります。

声の出演は基本的にすべてもりいがやっておりますが、2話目からはゲストスターが登場しております。


第1話 刃傷!松の廊下(3分15秒)

ちんころちんべえ

出演:浅野内匠頭吉良上野介茶坊主達梶川与惣兵衛片岡源五右衛門脇坂淡路守お軽早野勘平不破数右衛門


イベントのゲストの接待係を任された浅野内匠頭と、イベント部長の吉良上野介の「ケンカ」のおはなしです。


吉良は浅野と仲が悪いので、イベント当日に着てくる衣裳や出勤時間について嘘を教えたりして、さらに「城の中をうろついて、まるでフナのような侍だ」となじって徹底的にいじめます。

これは歌舞伎、講談、浪曲、映画ではおなじみのシーンですが、もちろんビキニは出てきません。このデフォルメについてあるユーザーから山上たつひこの漫画「凶変松の廊下」に似てるというご指摘がありました。その作品では内匠頭が教えられた登城の正装は「全裸でオシッコをしながら歩く」というものでしたが、私のビキニとの関連はなく、あくまで山上氏と私の発想が単に似ていたという宿縁でございます。


内匠頭をはがいじめにするのは梶川与惣兵衛。内匠頭をねじ伏せる実在した人物です。怪力である設定は講談などに出てきます。マンガでは強調して、彼だけ劇画調になっております。


冒頭から登場する茶坊主は、松乃廊下のシーンではおなじみのスタッフです。

「お召し物が違います」と教えてくれたのは三阿弥

二度目のはがいじめの時、一緒にいる茶坊主はほうきを持っています。いくつかの映像版「忠臣蔵」でお掃除をしており、講談のほうでは内匠頭の短刀はほうきでたたき落とすという設定から、意外にほうきは重要なアイテムです。

ほうき、掃除と言えばレレレのおじさん。レレレのおじさんと言えば杉浦茂(<赤塚不二夫先生がリスペクトしていた漫画家)と言うことで、そういう顔立ちに描きました。で、坊主と言えばクリリンということで、その要素も混ざっており、たいがいの日本人になじむ味付けとなっております。


控え室で正しい衣裳を用意してくれていたのは家来の片岡源五右衛門。このエピソードも講談、浪曲、映画に出てきます。彼がド●えもんに似ているのは、源五右衛門(ゲンゴエモン)という名前が似ていることから。当初「えぼしだいもん〜!」と言いながら四次元ポケットから正装を出すというアイデアがありましたが、やめました。顔にその名残が残っております。

一緒にいて背中しか写ってない家来は源五右衛門の同僚で、実は第2話にも後ろ姿で出てきます。第1話での彼の袴は軍袴とふつうの袴を混ぜちゃったようなおかしないでたちです。

描いたもりいの気持ち的には、彼は早水藤左衛門です。


この第1話で吉良がもう死んだと判断したユーザーの方がいましたがおそらく出血の量からそうお考えになったのでしょう。

ここはあんまり映画ではビジュアル化されない史実を盛りこみました。史実では傷は浅かったそうなのですがたいへんに出血が多かったというのです。もりいのこだわりでございます。


ちょいちょい見切れていた民芸品のこまいぬみたいなヤツは「ちんころ・ちんべえ」今後ともよろしくお願いします。

生類憐れみの令というおふれの出てる背景を持つ忠臣蔵ではちょいちょいイヌが登場します。本作とて例外ではございません。

彼のオマージュになっているのは日本アニメの大先輩、ピカソにも絶賛された大藤信郎監督の「ちんころ平平」。ちんべえは平平をリスペクトしたキャラクターです。「なんという浅ましいお姿になったろうなあ」という台詞は「天狗退治」という作品の台詞を踏襲しています。


最後「しまったー!てめえら人間じゃねえ!」と叫んでいる脇坂淡路守は浅野内匠頭とはお友達の大名で、普段からかばってくれていました。浅野君が吉良のいじわるにキレなければいいが…と日ごろから心配してたけど事件が起こってしまったので「しまった!」と言っています。萬屋錦之介の当たり役だったので彼の似顔絵を使い、人気番組「破れ傘刀舟」の名台詞を言わせておりますが、忠臣蔵とそのセリフはまったく因果関係がございません。


予告編に登場する3人は事件中にデートをしくさっていたお軽勘平歌舞伎のキャラクター)、そして不破数右衛門です。

お軽と勘平のカップルは歌舞伎では超有名なキャラですが、このいでたちで登場する「裏門合点」はほとんど上演されることがありません。

「まんが超忠臣蔵」では不破数右衛門は神出鬼没のキャラクターです。事件当時リストラにあってるキャラクターで、どの映画でもヒゲヅラでボロを着て、鎧櫃(よろいびつ)をしょって現れ、滑稽です。

彼の言ってる「ところであんた、写真好き?」というセリフは広川太一郎氏の当たり役エリック・アイドルの登場する「モンティ・パイソン」のコントにあるセリフで、他人に不躾にエッチなプライベートを聞き出そうとするキャラクターでした。


予告編は次の作品にまったく関係ございません。


第2話 田村邸の決別(4分13秒)

出演:浅野内匠頭多門伝八郎庄田安利田村右京大夫片岡源五右衛門大石内蔵助磯田武太夫不破数右衛門


大事なイベント中に刃傷沙汰を起こした内匠頭に「すぐ切腹!」という裁決が猛スピードでくだり、江戸城の近所の田村さんちの庭で切腹がおこなわれることになった、そのエピソードです。浪曲で聴いたり映画で観ると泣いちゃうシーンです。ほんとは。

最初に切腹会場についてもめているのは目付(誤解を承知で言うと警察みたいなもの。)の多門伝八郎(おかどでんぱちろう)と、上司の庄田安利

一国一城の主が庭先で切腹させられるなんてかわいそうだと多門は抗議します。「元禄忠臣蔵」が元ネタで、以降映画やドラマでも見られるシーンです。

内匠頭に同情的な多門は映画やドラマでも一方的な裁決に対して反旗を翻すなど、「いい人」の役で、いっぽうの庄田さんはいじわるく「庭先で切腹でいいだろう」と冷酷。このふたりのコントラストのオリジナルは歌舞伎の石堂右馬之丞と薬師寺治郎左衛門として有名で、アニメでの衣裳や顔色はそれがベースになっています。


ちなみに本アニメでのこの会場には、泉岳寺にあったり講談に出てくるものを全部用意して造園しました。桜の木、お化け銀杏。血染めの梅。そして血染めの石です。

ついでに言うと、田村邸の門前のシーンの夕日の落ち方は当時の田村邸の地図をもとに東西南北を意識して作画されています。


あとから菓子折を持って現れるのが、この屋敷の主人、なんの因果か自分ちを切腹会場にされちゃった田村さんです。

声を演じているのが、実際田村邸のあとで「切腹最中」というヒット菓子を売ってる新正堂の社長さんです。


ド●えもんそっくりな片岡源五右衛門が、切腹しようとしてる殿さまに面会がしたいと必死にお願いしてる旨を目付のふたりに伝えに来てるシーンがこの作品の冒頭です。

講談や浪曲、映画では「無刀、無言(カタナを持たず、殿さまの会話をしてはいけない)」の条件付きで多門さんの一存で面会が許されますが、本アニメでは「無刀、無言、無一文、無節操、無責任」という制約が設けられ、片岡は映画「無責任」シリーズのオマージュな歌を歌いながら無節操ないでたちで田村邸に入ることができます。

声をかけられないので、ただただ桜の木の下で泣いてる片岡をなんとか殿さまにコンタクトさせてあげようと、立場上、直接教えてもあげられないので多門が「月が綺麗だ」とかなんとか言って、庭の家来を教えてあげるのが定石ですが、本アニメの殿さまはオトボケなのでだいぶ手こずらせます。

テントに書かれている「田村新校町会」は、実際のあそこらへんの(現代の)町会さんです。昔は田村町と言ったそうです。

切腹をする際の内匠頭の服の脱ぎ方は映画などに出てくる作法です。みなさんもカミシモで切腹をするときの参考にして下さい

内匠頭が死に際に思い浮かべるのが第一の家臣・大石内蔵助です。「ゲンゴ、冥途にて待ちおるぞよ!」と片岡に声をかけて内匠頭は逝きます。


介錯人(磯田武太夫)の顔だちは日本でもっとも有名な介錯人、「子連れ狼」の拝一刀をイメージしています。

赤い月に浮かび上がる切腹までの期日は正しいと思います。TVシリーズ「宇宙戦艦ヤマト」のオマージュです。


予告編にある、カゴに不破数右衛門が走って声をかけるシーンは講談がもとで、映像化もされています。もちろん写真が好きかを聞くのではなく、なにかあったのかと昔の仲間に問いただします。じっさいの数右衛門はリストラ後は赤穂のそばに住んでいます。本アニメでは最初江戸にいてカップルをひやかし、箱根あたりで早駕籠をひやかし、第3話では赤穂にいます。


第3話 大評定(4分20秒)

出演:大石内蔵助奥野将監三村次郎左衛門矢頭右衛門七大石主税寺坂吉右衛門萱野三平原惣右衛門神崎与五郎不破数右衛門


急に「殿さまは死んだ」「城から出て行け」と言われておおさわぎする赤穂城。

これが第3作のおはなしです。

オープニング、全然違うアニメが始まったかのようにふざけました。絵柄はともかく、ほんとうの赤穂城に天守閣はありませんでした。( 家臣のカミシモが無紋で不吉… w)


主役と言える大石内蔵助をどういう声で作るか最初の課題でした。

声の録音のギリギリまで長谷川一夫のモノマネでいこうかどうしようか迷ってましたが、「ヤッターマン」の忠臣蔵でも長谷川一夫風だったし、ソレを後押しとして決心。お手本として桜井長一郎のモノマネをYouTubeで探したりしてました。

が、広川太一郎のモノマネが無くなっちゃうのも寂しいなと思いあらため、サイレント時代の「尾上松之助の忠臣蔵」などは同じ俳優が何役もやってるじゃないかと開き直り、内蔵助も広川節でいくことにしました。


ドラマや映画では、侍が会議するだけのシーンで、どうしても退屈になりがちな、本エピソードは最初、ミュージカル調にしようかと思ったんですが、それはそれでわかりにくいと思ってやめました。

大広間でざわつくシーンでは背後のガヤの音にバカバカしい台詞が混ざっています。たとえば「これは漫才ではないんだぞミスター・バーマン」これは70年代に公開された映画「ゾンビ」の冒頭の騒然としてるニュースショーに出てくる科学者?のセリフで当時の字幕をイメージしています。また「オイ見ろよ、なんかヘンなもの落としてったぜ」と映画「ブレードランナー」に出てくる台詞も入ってます。よく聞いて探してみてください。

「意味わかんない」と言われている老藩士の声は漫画家でイラストレーターの青木俊直氏の特出。「城を枕に討ち死にじゃ!」も青木さんです。なかなか素敵な迫力。もりいがシナリオを書き間違えて「官吏(かんり)」に「かんし」とカナを振ってしまってそのままオンエアになっております。


歯の抜けるように同士がいなくなるとき、大石内蔵助の向かって左にメガネをかけた老人がいますが、この人は悪役で有名な大野九郎兵衛というキャラクターのつもりで描いたんですが、消し忘れてしまって、ほんとはいっとう最初に抜けるはずのキャラクターなんですが相当最後まで残ってくれてます。


さて、田中邦衛さんみたいな奥野将監がまず切腹の邪魔に入ります。身分の低い三村次郎左衛門を差別しています。講談に出てくるエピソードで、希にドラマ化されています。三村を演じているのはポンキッキーズのコニーちゃんを生んだ、きはらようすけ氏です。氏は冒頭の「わがきみ!」と叫んでる藩士も演じてくださってます。

奥野将監は大河ドラマ「元禄繚乱」で寺田農が演じたので、彼が演じた「ラピュタ」のムスカのイメージでコンテを書いてたのですが何テイクやっても、もりいのモノマネが全然似ないのと、「最後の忠臣蔵」で奥野将監を演じた田中邦衛のほうがおもしろいし、もりいと誕生日も一緒なので変更しました。


次に奥野が邪魔に入るのは子供の矢頭右衛門七が同席していたから。元服は15歳なので「20歳未満」云々というセリフはだいぶ現代的に大目に見ています。

史実?では「メンバーに女の子が混ざってる」とまで言われた眉目秀麗な美少年だったとか。

演じているのはカンコンキンシアターでシモネタ番長・ラッキィ池田氏のひどすぎる振り付けのダンスをやってのける名優・富田真央さん。

右衛門七が大石主税に「松乃丞さま」と言ってますが、字幕には大石主税となっていてまぎらわしくてすいません。この場での大石主税はまだ元服前で、ほんとうは幼名である松乃丞なのですが、あとのことを考えて大石主税にしました。

右衛門七が脅迫するシークエンスは講談にあるエピソードで、小島剛夕の漫画などにも出てきますが、滅多に映画やドラマには出てきません。


寺坂吉右衛門が切腹にくわえてほしがるエピソードも講談です。結局講談というのは自由に銘々伝を作ってしまうので評定、切腹の場面にいろいろエピソードがあり、まとめると本アニメのようにまったく先に進まないと言うことになります。本アニメでは全エピソードを一緒くたにして、いじわるなクロスオーバー作品に仕上げました。

寺坂吉右衛門が切腹にくわえてほしがるシーンは、実際は庭先から嘆願しますが、本アニメでは歌舞伎の寺岡平右衛門のオマージュで登場します。歌舞伎では切腹にくわえてほしがるのではなく、討ち入りの同士に加えてほしいと、遊里で内蔵助に嘆願します。

「申しあげたき儀がごわりまする」と言ったあとに「ねい、ねい、ねいねいねい」と言うセリフは実際に歌舞伎の七段目にあり、歌舞伎を観てても「なにやってるんだ?こいつは」と思ってたので本アニメでもやらせました。


早まって切腹する萱野三平は実際はこんなところで早まりません。史実の彼は連名に加わった後、家の事情があって使命との板挟みで自害するんですが、とにかくイの一番に死んじゃったメンバーではあります。そんなかわいそうな三平をモデルにした歌舞伎のキャラが早野勘平です。「早まったことをいたしたな〜!」は勘平が死ぬ六段目に出てくる千崎弥五郎、原郷右衛門の台詞で、そのままモデルとなった神崎与五郎原惣右衛門に言わせています。


最後、門の外で血判を集めていますが「血判状を回収しています」という言い方は実際おかしい。集めているのは血判そのものであります(笑)。(あ、でも、署名血判した神文を回収しているとすれば、あながちデタラメでもないのか)

予告のあとまで登場する顔の四角い侍はアニメスタッフの間では「ジブリざむらい」と呼んでおります。


第4話 里げしき(3分30秒<本編)

  出演:大石内蔵助村上喜剣浮橋太夫不破数右衛門鷺坂伴内前野平内寺坂吉右衛門大野九郎兵衛原惣右衛門神崎与五郎


今回はスポンサー様についていただきました。

東京・新橋に大正時代から店を構える、ご存じ!切腹最中(義士ようかんもよろしくね!)の新正堂さんの提供でお送りいたします。

番組の最後にCMが入っております。


さて

忠臣蔵では、お城の受け渡しのあと、大石内蔵助一家は京都の山科(やましな)に転宅し、内蔵助自身は突如、島原(or祇園あたり)で遊びほうけ始めます

そのおなじみのエピソードです。

仮名手本忠臣蔵では七段目にあたり、映画やドラマでも必ずと言ってイイほど、この遊興シークエンスは扱われます。

「里げしき」の「里」とは「いろざと」とも言われる「遊里(ゆうり)」を指し、遊郭のあるエリアのことを言います。

「里げしき」というワード自体は大石内蔵助の作ったと言われるうたのタイトルでもあり、芥川龍之介「或日の大石内蔵助」にも出て参ります。

かっこいいので、今回のタイトルにいたしました。


舞台となる遊郭は「一力茶屋(いちりきぢゃや)」。

店先のデザインは人形浄瑠璃や歌舞伎の舞台美術のエッセンスを踏まえた上で、ベタな遊郭のイメージを加えております。

時代劇などでおなじみとも言える?、遊郭=赤のイメージが、元禄時代は定着してない感があるんですが、遊女のヘアスタイルやファッションと共にかなり悩んだところでございますが、わかりやすさを優先しました。

遊女に関しては当時のファッションの先端を言ってる人達なので、ぶっちゃけ、どんな格好でもアリかなと、ご覧のようにしております。

浮橋太夫の声をしていただいてるのはイラストレーターの栗生ゑゐこさん。

妊娠9ヶ月の体でふざけてもらいました。

ジャンケンに勝って言う「勝ったのはみんなのおかげ」という台詞はAKB48の第2回ジャンケン選抜の時に、小嶋陽菜がバラエティ番組のアドバイスで勝ったときに「言え」と言われていたもの。


宴会に付き合わされてるのは原惣右衛門神崎与五郎。歌舞伎やドラマで、だいたいここらへんでいつも便利に使われてるキャラです。


内蔵助が天井にラクガキをしたエピソードも有名なので取り入れましたが、おしゃれに一二点や句読点も入れてみました


橋本平左衛門は、遊女と心中して脱盟してしまうかわいそうなキャラです。実際はジャンケンに負けて討ち入り選抜から漏れたわけではありません。

彼が嘆く「太夫はなにをお考えか!」的なセリフは忠臣蔵のどっかに必ず出てくる鉄板です。


遊郭まで出かけて内蔵助に討ち入りを急かす村上喜剣は講談や浪曲のキャラクターです。

今回の三味線と喜剣の声は、「忠臣蔵~村上喜剣~」も十八番の浪曲師・うなるカリスマの国本武春先生にお願いしました。桃中軒 雲右衛門の流れを汲む武春先生は忠臣蔵がお家芸。実はもりいとは長いお付き合いなのでございます。


オリジナルストーリーのほうの喜剣は、内蔵助に仇討ちの気持ちが無いと知るや、罵詈雑言を浴びせ、暴力を振るったり、ツバを掛けたりと無礼の限りを尽くしますが、ここではハダカにされて追い出されます。


彼と言い合いになってる部屋に用意されている料理は歌舞伎や講談で内蔵助の本心を試すために食べさせられるタコと、講談で出てくるタイ=内蔵助がの目玉を食べる奇行を見せて周囲に「あの人はオカシイ」と思わせる、そのタイをあしらいました。


喜剣がハダカにされる野球拳の時に一瞬屋外になって、前作で登場した寺坂吉右衛門が踊ってますが、そもそも寺坂は仮名手本忠臣蔵で義盟に加えてほしくて一力茶屋にやってくるキーパーソンなので、彼はどちらかと言うと前作よりもこっちの出番のほうがふさわしいのです。

彼のうしろで縁の下でちぎれた手紙と一緒にマヌケにねそべっているのは、元藩士でありながら吉良側に寝返った大野九郎兵衛です。

このあと、仮名手本では大野は寺坂にトドメをさされます。

ちなみに、この屋外シーンは目隠し鬼のときも使われてますが、左にパンすると村上の背後にチラッとハシゴがかかってるのが見えます。

言うまでもなく、おかるが二階から降りてくる用のもので、おかるはアニメには登場しませんが、あしらっておきました。(ほとんど見えませんなw)

オーパーツさく裂の本シリーズですが、今回一番の推しは七段目の手水鉢の上に、昭和時代の手動式手洗い器をぶら下げております。あたしの時代にはなじみが無く、寅さんとか見ると出てきます。下から突起を押すと水がちょろっと出てくる仕掛け。


隣室で聞き耳を立てているのは、吉良の放ったスパイ鷺坂伴内と、千坂兵部の放ったスパイの前野平内です。

鷺坂伴内は人形浄瑠璃でも歌舞伎でも無理くりふざける演出をされます。特に歌舞伎でのメイクはキモチが悪く、存在も浮いていて、道化的な扱いがかえって不気味で、モーリス・ベジャールはそこを気に入ったと見えてバレエではオリジナルよりも象徴的な演出をしています。

前野は、猿島右門でもよかったんですが、先にスパイに出かけた人を採用しました。


ラストのふとんの柄はももクロを意識しており、ジャンケンではAKBのジャンケン選抜のテーブルをイメージしているなど、「女子力」を象徴する今回、制作当時(2012年3/14現在)に飛ぶ鳥を落とす勢いの2大アイドルの要素をモチーフとして取り入れましたが、彼女たちの時代が次世代に移ってネタが誰にもわからなくても、廃れないようなかんじでしのばせました。


さて


今回は2部構成のオモムキがありまして

予告編は、仮名手本忠臣蔵の五段目、山崎街道をあしらっております。

M16をぶっ放してるのは、初回の予告編以来の登場の早野勘平

本来は「二つ玉」とも呼ばれるシーンなので、勘平のライフルは素直に2発しか撃たないほうがよかったかもなのですが、ここは盛り上がっていきたいので、欲張りました

個人的に大好きなキャラクター、定九郎にはゾンビになってもらいました。カネに心が残って死にきれぬと見えます。

ラジオが垂れてる能書きはゾンビに対する必勝法です。「クビをはずすか、脳を破壊しろ」と言っています。


いのししちゃんにも印象的な登場をしてもらってます(^∇^)。モリシゲ風の声色をお楽しみ下さい。いろんなかんじで、某名作アニメのオマージュです。


エンドタイトルにかかっている「ぼぼ三昧」はこわかっこいいロッカーの柴山俊之氏によるもので、歌詞は内蔵助が遊びほうけた島原を歌っており、ゾンビにはロックサウンドがピッタリだし、ともかく大大好きなので、頼み込んで使わせていただいております。

ただ、熊本民謡「おてもやん」の曲で、福岡出身の柴山氏が「島原」というと、長崎の島原半島のほう??

村上喜剣が九州・薩摩の武士なので、そのゆかりもあって、このオーバーラップは逆に偶然のコラボ。