「「超忠臣蔵」を10倍楽しく見る方法」の版間の差分

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最後「しまったー!てめえら人間じゃねえ!」と叫んでいる[[脇坂淡路守]]は浅野内匠頭とはお友達の大名で、普段からかばってくれていました。浅野君が吉良のいじわるにキレなければいいが…と日ごろから心配してたけど事件が起こってしまったので「しまった!」と言っています。萬屋錦之介の当たり役だったので彼の似顔絵を使い、人気番組「破れ傘刀舟」の名台詞を言わせておりますが、忠臣蔵とそのセリフはまったく関係がございません。
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最後「しまったー!てめえら人間じゃねえ!」と叫んでいる[[脇坂淡路守]]は浅野内匠頭とはお友達の大名で、普段からかばってくれていました。浅野君が吉良のいじわるにキレなければいいが…と日ごろから心配してたけど事件が起こってしまったので「しまった!」と言っています。萬屋錦之介の当たり役だったので彼の似顔絵を使い、人気番組「破れ傘刀舟」の名台詞を言わせておりますが、忠臣蔵とそのセリフはまったく因果関係がございません。
  
  
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ちなみに本アニメでのこの会場には、泉岳寺にあったり講談に出てくるものを'''全部用意'''して造園しました。桜の木、お化け銀杏。そして血染めの梅。そして血染めの石です。
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ちなみに本アニメでのこの会場には、泉岳寺にあったり講談に出てくるものを'''全部用意'''して造園しました。桜の木、お化け銀杏。血染めの梅。そして血染めの石です。
  
 
ついでに言うと、田村邸の門前のシーンの夕日の落ち方は'''当時の田村邸の地図をもとに東西南北を意識して作画'''されています。
 
ついでに言うと、田村邸の門前のシーンの夕日の落ち方は'''当時の田村邸の地図をもとに東西南北を意識して作画'''されています。
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赤い月に浮かび上がる切腹までの期日は正しいと思います。TVシリーズ「宇宙戦艦ヤマト」のオマージュです。
 
赤い月に浮かび上がる切腹までの期日は正しいと思います。TVシリーズ「宇宙戦艦ヤマト」のオマージュです。
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予告編にある、カゴに不破数右衛門が走って声をかけるシーンは講談がもとで、映像化もされています。もちろん写真が好きかを聞くのではなく、なにかあったのかと昔の仲間に問いただします。じっさいの数右衛門はリストラ後は赤穂のそばに住んでいます。本アニメでは最初江戸にいてカップルをひやかし、箱根あたりで早駕籠をひやかし、第3話で赤穂にいます。
 
予告編にある、カゴに不破数右衛門が走って声をかけるシーンは講談がもとで、映像化もされています。もちろん写真が好きかを聞くのではなく、なにかあったのかと昔の仲間に問いただします。じっさいの数右衛門はリストラ後は赤穂のそばに住んでいます。本アニメでは最初江戸にいてカップルをひやかし、箱根あたりで早駕籠をひやかし、第3話で赤穂にいます。

2011年3月19日 (土) 22:15時点における版

この度は「まんが超忠臣蔵」をお楽しみいただきましてありがとうございます。

意味がわからんというお声をほうぼうから頂戴いたしましたのですが、とるにたらない作品ですので「それでもかまわん」とお答えいたしていたのでありますが、もしも元ネタを知ってたら、一層お楽しみいただけるのではないかと思いまして、このたびこちらに解説コーナーを設ける運びとなりました。

デタラメに登場しているかのように見える、各キャラクターは意外に史実上の登場人物です。

どうぞ読んで、またあらためてアニメをお楽しみくださいませ。


第1話 刃傷!松の廊下(3分15秒)

出演:浅野内匠頭吉良上野介茶坊主達梶川与惣兵衛片岡源五右衛門脇坂淡路守お軽早野勘平不破数右衛門


イベントのゲストの接待係を任された浅野内匠頭と、イベント部長の吉良上野介の「ケンカ」のおはなしです。


吉良は浅野と仲が悪いので、イベント当日に着てくる衣裳や出勤時間について嘘を教えたりして、さらに「城の中をうろついて、まるでフナのような侍だ」となじって徹底的にいじめます。

これは歌舞伎、講談、浪曲、映画ではおなじみのシーンですが、もちろんビキニは出てきません。このデフォルメについてあるユーザーから山上たつひこの漫画「凶変松の廊下」に似てるというご指摘がありました。その作品では内匠頭が教えられた登城の正装は「全裸でオシッコをしながら歩く」というものでしたが、私のビキニとの関連はなく、あくまで山上氏と私の発想が単に似ていたという宿縁でございます。


内匠頭をはがじめにするのは梶川与惣兵衛。内匠頭をねじ伏せる実在した人物です。怪力である設定は講談などに出てきます。マンガでは強調して、彼だけ劇画調になっております。


控え室で正しい衣裳を用意してくれていたのは家来の片岡源五右衛門。このエピソードも講談、浪曲、映画に出てきます。彼がド●えもんに似ているのは、源五右衛門(ゲンゴエモン)という名前が似ていることから。当初「えぼしだいもん〜!」と言いながら四次元ポケットから正装を出すというアイデアがありましたが、やめました。顔にその名残が残っております。

一緒にいて背中しか写ってない家来は源五右衛門の同僚で、実は第2話にも後ろ姿で出てきます。第1話での彼の袴は軍袴とふつうの袴を混ぜちゃったようなおかしないでたちです。


この第1話で吉良がもう死んだと判断したユーザーの方がいましたがおそらく出血の量からそうお考えになったのでしょう。ここはあんまり映画ではビジュアル化されない部分をこだわりました。史実では傷は浅かったそうなのですがたいへんに出血が多かったというのです。もりいのこだわりでございます。


ちょいちょい見切れていた民芸品のこまいぬみたいなヤツは「ちんころ・ちんべえ」今後ともよろしくお願いします。彼のオマージュになっているのは日本のアニメの大先輩、ピカソにも絶賛された大藤信郎監督の「ちんころ平平」をリスペクトしたキャラクターです。「なんという浅ましいお姿になったろうなあ」という台詞は「天狗退治」という作品の台詞を踏襲しています。


最後「しまったー!てめえら人間じゃねえ!」と叫んでいる脇坂淡路守は浅野内匠頭とはお友達の大名で、普段からかばってくれていました。浅野君が吉良のいじわるにキレなければいいが…と日ごろから心配してたけど事件が起こってしまったので「しまった!」と言っています。萬屋錦之介の当たり役だったので彼の似顔絵を使い、人気番組「破れ傘刀舟」の名台詞を言わせておりますが、忠臣蔵とそのセリフはまったく因果関係がございません。


予告編に登場する3人は事件中にデートをしくさっていたお軽勘平(歌舞伎のキャラクター)、そして不破数右衛門です。

お軽と勘平のカップルは歌舞伎では超有名なキャラですが、このいでたちで登場する「裏門合点」はほとんど上演されることがありません。

「まんが超忠臣蔵」では不破数右衛門は神出鬼没のキャラクターです。事件当時リストラにあってるキャラクターで、どの映画でもヒゲヅラでボロを着て、鎧櫃(よろいびつ)をしょって現れ、滑稽です。

彼の言ってる「ところであんた、写真好き?」というセリフは広川太一郎氏の当たり役エリック・アイドルの登場する「モンティ・パイソン」のコントにあるセリフで、他人に不躾にエッチなプライベートを聞き出そうとするキャラクターでした。

予告編は次の作品にまったく関係ございません。


第2話 田村邸の決別(4分13秒)

出演:浅野内匠頭多門伝八郎庄田安利田村右京大夫片岡源五右衛門大石内蔵助磯田武太夫不破数右衛門


大事なイベント中に刃傷沙汰を起こした内匠頭に「すぐ切腹!」という裁決が猛スピードでくだり、江戸城の近所の田村さんちの庭で切腹がおこなわれることになった、そのエピソードです。浪曲で聴いたり映画で観ると泣いちゃうシーンです。ほんとは。

最初に切腹会場についてもめているのは目付(誤解を承知で言うと警察みたいなもの。)の多門伝八郎(おかどでんぱちろう)と、上司の庄田安利

一国一城の主が庭先で切腹させられるなんてかわいそうだと多門は抗議します。「元禄忠臣蔵」が元ネタで、以降映画やドラマでも見られるシーンです。

内匠頭に同情的な多門は映画やドラマでも一方的な裁決に対して反旗を翻すなど、「いい人」の役で、いっぽうの庄田さんはいじわるく「庭先で切腹でいいだろう」と冷酷。このふたりのコントラストのオリジナルは歌舞伎の石堂右馬之丞と薬師寺治郎左衛門として有名で、アニメでの衣裳や顔色はそれがベースになっています。


ちなみに本アニメでのこの会場には、泉岳寺にあったり講談に出てくるものを全部用意して造園しました。桜の木、お化け銀杏。血染めの梅。そして血染めの石です。

ついでに言うと、田村邸の門前のシーンの夕日の落ち方は当時の田村邸の地図をもとに東西南北を意識して作画されています。


あとから菓子折を持って現れるのが、この屋敷の主人、なんの因果か自分ちを切腹会場にされちゃった田村さんです。

声を演じているのが、実際田村邸のあとで「切腹最中」というヒット菓子を売ってる新正堂の社長さんです。


ド●えもんそっくりな片岡源五右衛門が、切腹しようとしてる殿さまに面会がしたいと必死にお願いしてる旨を目付のふたりに伝えに来てるシーンがこの作品の冒頭です。

講談や浪曲、映画では「無刀、無言(カタナを持たず、殿さまの会話をしてはいけない)」の条件付きで多門さんの一存で面会が許されますが、本アニメでは「無刀、無言、無一文、無節操、無責任」という制約が設けられ、片岡は映画「無責任」シリーズのオマージュな歌を歌いながら無節操ないでたちで田村邸に入ることができます。

声をかけられないので、ただただ桜の木の下で泣いてる片岡をなんとか殿さまにコンタクトさせてあげようと、立場上、直接教えてもあげられないので多門が「月が綺麗だ」とかなんとか言って、庭の家来を教えてあげるのが定石ですが、本アニメの殿さまはオトボケなのでだいぶ手こずらせます。

テントに書かれている「田村新校町会」は、実際のあそこらへんの町会さんです。昔は田村町と言ったそうです。

切腹をする際の内匠頭の服の脱ぎ方は映画などに出てくる作法です。みなさんもカミシモで切腹をするときの参考にして下さい

内匠頭が死に際に思い浮かべるのが第一の家臣・大石内蔵助です。「ゲンゴ、冥途にて待ちおるぞよ!」と片岡に声をかけて内匠頭は逝きます。


介錯人(磯田武太夫)は日本でもっとも有名な介錯人、「子連れ狼」の拝一刀をイメージしています。

赤い月に浮かび上がる切腹までの期日は正しいと思います。TVシリーズ「宇宙戦艦ヤマト」のオマージュです。


予告編にある、カゴに不破数右衛門が走って声をかけるシーンは講談がもとで、映像化もされています。もちろん写真が好きかを聞くのではなく、なにかあったのかと昔の仲間に問いただします。じっさいの数右衛門はリストラ後は赤穂のそばに住んでいます。本アニメでは最初江戸にいてカップルをひやかし、箱根あたりで早駕籠をひやかし、第3話で赤穂にいます。


第3話 大評定(4分20秒)

出演:大石内蔵助奥野将監三村次郎左衛門矢頭右衛門七大石主税寺坂吉右衛門萱野三平原惣右衛門神崎与五郎不破数右衛門


急に「殿さまは死んだ」「城から出て行け」と言われておおさわぎする赤穂城。

これが第3作のおはなしです。

オープニング、全然違うアニメが始まったかのようにふざけました


ドラマや映画では、侍が会議するだけのシーンで、どうしても退屈になりがちなので最初はミュージカル調にしようかと思ったんですが、それはそれでわかりにくいと思ってやめました。

大広間でざわつくシーンでは背後のガヤの音にバカバカしい台詞が混ざっています。たとえば「これは漫才ではないんだぞミスター・バーマン」これは70年代に公開された映画「ゾンビ」の冒頭の騒然としてるニュースショーに出てくる科学者?のセリフで当時の字幕をイメージしています。また「オイ見ろよ、なんかヘンなもの落としてったぜ」と映画「ブレードランナー」に出てくる台詞も入ってます。よく聞いて探してみてください。

「意味わかんない」と言われている老藩士の声は漫画家でイラストレーターの青木俊直氏の特出。「城を枕に討ち死にじゃ!」も青木さんです。なかなか素敵な迫力。もりいがシナリオを書き間違えて「官吏(かんり)」に「かんし」とカナを振ってしまってそのままオンエアになっております。


歯の抜けるように同士がいなくなるとき、大石内蔵助の向かって左にメガネをかけた老人がいますが、この人は悪役で有名な大野九郎兵衛というキャラクターのつもりで描いたんですが、消し忘れてしまって、ほんとはいっとう最初に抜けるはずのキャラクターなんですが相当最後まで残ってくれてます。


さて、田中邦衛さんみたいな奥野将監がまず切腹の邪魔に入ります。身分の低い三村次郎左衛門を差別しています。講談に出てくるエピソードで、希にドラマ化されています。三村を演じているのはポンキッキーズのコニーちゃんを生んだ、きはらようすけ氏です。氏は冒頭の「わがきみ!」と叫んでる藩士も演じてくださってます。

奥野将監は大河ドラマ「元禄繚乱」で寺田農が演じたので、彼が演じた「ラピュタ」のムスカのイメージでコンテを書いてたのですが、もりいのモノマネが全然似ないのと、「最後の忠臣蔵」で奥野将監を演じた田中邦衛のほうがおもしろいし、もりいと誕生日も一緒なので変更しました。


次に奥野が邪魔に入るのは子供の矢頭右衛門七が同席していたから。元服は15歳なので「20歳未満」云々というセリフはだいぶ現代的に大目に見ています。

史実?では「メンバーに女の子が混ざってる」とまで言われた眉目秀麗な美少年だったとか。

演じているのはカンコンキンシアターでシモネタ番長・ラッキィ池田氏のひどすぎる振り付けのダンスをやってのける名優・富田真央さん。

右衛門七が大石主税に「松乃丞さま」と言ってますが、字幕には大石主税となっていてまぎらわしくてすいません。この場での大石主税はまだ元服前で、ほんとうは幼名である松乃丞なのですが、あとのことを考えて大石主税にしました。

右衛門七が脅迫するシークエンスは講談にあるエピソードで、小島剛夕の漫画などにも出てきますが、滅多に映画やドラマには出てきません。


寺坂吉右衛門が切腹にくわえてほしがるエピソードも講談です。結局講談というのは自由に銘々伝を作ってしまうので評定、切腹の場面にいろいろエピソードがあり、まとめると本アニメのようにまったく先に進まないと言うことになります。本アニメでは全エピソードを一緒くたにして、いじわるなクロスオーバー作品に仕上げました。

寺坂吉右衛門が切腹にくわえてほしがるシーンは、実際は庭先から嘆願しますが、本アニメでは歌舞伎の寺岡平右衛門のオマージュで登場します。歌舞伎では切腹にくわえてほしがるのではなく、討ち入りの同士に加えてほしいと、遊里で内蔵助に嘆願します。

「申しあげたき儀がごわりまする」と言ったあとに「ねい、ねい、ねいねいねい」と言うセリフは実際に歌舞伎の七段目にあり、歌舞伎を観てても「なにやってるんだ?こいつは」と思ってたので本アニメでもやらせました。


早まって切腹する萱野三平は実際はこんなところで早まりません。史実の彼は連名に加わった後、家の事情があって使命との板挟みで自害するんですが、とにかくイの一番に死んじゃったメンバーではあります。そんなかわいそうな三平をモデルにした歌舞伎のキャラが早野勘平です。「早まったことをいたしたな〜!」は勘平が死ぬ六段目に出てくる千崎弥五郎、原郷右衛門の台詞で、そのままモデルとなった神崎与五郎原惣右衛門に言わせています。


最後、門の外で血判を集めていますが「血判状を回収しています」という言い方は実際おかしい。集めているのは血判そのものであります(笑)。

予告のあとまで登場する顔の四角い侍はアニメスタッフの間では「ジブリざむらい」と呼んでおります。