「赤埴源蔵」の版間の差分

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よく赤垣(あかがき)と間違われる。江戸急進派。
 
よく赤垣(あかがき)と間違われる。江戸急進派。
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明治期の本には「赤垣源蔵、[[武林唯七]]とくると、どんな子供衆でもご存知でございます」(青海堂 落語忠臣蔵)と、言ってるくらいの人気キャラ。
  
  
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すぎ「マア。源蔵様、泣いてらっしゃるんですか?」
 
すぎ「マア。源蔵様、泣いてらっしゃるんですか?」
  
源蔵「いや、あんまり寒いから目から水っぱなが出た」
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源蔵「いや、あんまり寒いから目から水っぱなが出た」(or 儂は風邪を引くと目からハナが出るby浪曲。…2016NHK講談大会の神田松鯉先生&2018.12月神田松之丞さんのラジオの公開収録で観た「徳利の別れ」では、師弟揃って女中とのやりとりが少ない重たいバージョンで、ハナのくだりは無かった。)
  
 
お兄さんは帰宅後、おすぎから源蔵の様子を聞き、気の毒がる。
 
お兄さんは帰宅後、おすぎから源蔵の様子を聞き、気の毒がる。
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「徳利の別れ」「名残の徳利」 
 
「徳利の別れ」「名残の徳利」 
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落語「赤垣源蔵」では兄の名は柴田伊左衛門(脇坂淡路守の家来)。源蔵がお鍋(と名が変わる)の顔のことを「人一化け九」とからかえば、お鍋は髪を上げるときに使うヒビったけの入ったムサい茶碗をもてなしに出すなどふたりの間柄にギャグ度がパワーアップ。源蔵は羽織ではなく兄の名札に一献。
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討ち入りの朝、兄は下男の半助に「わが弟、源蔵がいたらたくさんホメ言葉をかけてくれ。もしいなかったらお前、切腹してはてろっ」
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それからめでたく仙台家の門前で二人は出会い、別れる。
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※講釈師もしてた五明楼玉輔(2nd)から三遊亭円遊(3rd)が伝授されたとされる講談のバリエーション。
  
  
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討ち入りのあとの火の始末をしている。
 
討ち入りのあとの火の始末をしている。
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[[忠臣蔵(大映)|大映]]ではカツシン。[[忠臣蔵 風の巻・雲の巻|渡辺謙]]とか[[年末時代劇スペシャル 忠臣蔵|あおい輝彦]]とか、意外に[[堀部安兵衛]]よりいい俳優がキャスティングされる(「[[TAKECHANマン忠臣蔵|タケちゃんマン忠臣蔵]]」では片岡鶴太郎)。
 
[[忠臣蔵(大映)|大映]]ではカツシン。[[忠臣蔵 風の巻・雲の巻|渡辺謙]]とか[[年末時代劇スペシャル 忠臣蔵|あおい輝彦]]とか、意外に[[堀部安兵衛]]よりいい俳優がキャスティングされる(「[[TAKECHANマン忠臣蔵|タケちゃんマン忠臣蔵]]」では片岡鶴太郎)。
  
元宝塚のもりいの友人が[[忠臣蔵ー花に散り雪に散りー|杜けあきの公演]]で演じた。
 
  
 
享年35。
 
享年35。
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== 目に青葉ヤマホトトギス赤穂浪士 ==
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野田秀樹主宰だった劇団夢の遊眠社による、赤垣源蔵が主役の1991年のお芝居「目に青葉ヤマホトトギス赤穂浪士」というのもある。
 
 
野田秀樹主宰だった劇団夢の遊眠社による、赤垣源蔵が主役の1991年のお芝居。
 
 
 
もりいは観ていないので「そういうのがあった」としかご案内できませんが、観たとしても、ほかの夢の遊眠社作品を観ないことには、ちゃんと感想は書けないんじゃないかなあという心持ちが、シナリオを読んで沸いた。
 
 
 
東大辞めたての野田氏が80年頃に作り、夢の遊眠社解散の直前の'91年に再演。読んだシナリオは'81年のモノ(「赤穂浪士 昆虫になれなかったファーブルの数学的帰納法」)。
 
 
 
  
内容はひねくっててよくわかんないんですが(きちんとしたデタラメ)、忠臣蔵物語につきものの正命題vs反命題・的な要素を、討ち入りと嫁入りとオオミズアオとファーブルと差別などで、わかりようのないわかりやすさでメタファーの花園にした作品。
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シナリオだけを読んでも特徴豊かな夢の遊眠社のほんとうの魅力までにはたどり着けなかったが、おはなしはイイ具合に荒唐無稽。忠臣蔵物語につきものの正命題vs反命題・的な要素をひねくって、わかりようのないわかりやすさでメタファーの花園にした作品。
  
主人公が赤垣源蔵とファーブルと蛾の三役をしてることでもわかるとおり、お話しがグルグルする。客の前に小出しに出してくる赤穂浪士ネタはというと、ときどき出てくる四十七士メンバーのチョイスとか、仮名手本の抜粋とかが意外にソツがなく、原作の野田氏が忠臣蔵に執着があるのか、次元の高いにわか勉強によるプレーなのかが計り知れない。いや、そこが計れたところでなんなのか。
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主人公が赤垣源蔵とファーブルと蛾の三役をしてることでもわかるとおり、お話し世界がグルグルする。客の前に小出しに出してくる赤穂浪士ネタはというと、ときどき出てくる四十七士メンバーのチョイスとか、仮名手本の抜粋とか、講談のアレンジが意外にソツがなく、原作の野田氏が忠臣蔵に執着があるのか、次元の高いにわか勉強によるプレーなのかが計り知れない。いや、そこが計れたところでなんなのか。ビデオでいいから観てみたい。
  
計る場合はいくつもの野田戯曲を観ないといけないんだろうなあと思っての、冒頭の「ほかの夢の遊眠社作品を観ないことには…」となる。
 
  
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加筆)まったく源蔵さんとは無関係だが野田秀樹のしごとには中村勘三郎(18th)の襲名興行の「野田版 研辰の討たれ」(H17)という脚本&演出作品があり、ストーリーライン自体はシンプルなのに野田先生がすごいワード数と演出でせわしなくふくらませ(いや、原作は知らないのだが)、そのものすごいエネルギーに当てられて死ぬ鑑賞者もいるんじゃないかというすさまじいコメディ劇がある。
  
とにかく、動いてるところを観ないと魅力が不明。
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赤穂浪士の討ち入り成功のころ、その義挙に否定的な刀磨上がりのサムライ・守山辰次と彼を仇とつけ狙う平井九市郎&才次郎兄弟のハナシ。遠巻きな四十七士の討ち入りのアンチテーゼにも感じる。
  
当時コレの美術やった朝倉摂先生、ビデオとか持ってないかなあ。
 
  
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ともあれ野田先生の脳みそはでかい壁みたいな薬箪笥のようでございます。
  
  
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== 関連作品 ==
 
== 関連作品 ==
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* [[赤垣源蔵]](日活)1929
 
* [[赤垣源蔵 討ち入り前夜]](日活)1938
 
* [[赤垣源蔵 討ち入り前夜]](日活)1938

2020年4月16日 (木) 22:26時点における版

役者絵:勝 新太郎
役者絵:渡辺 謙
役者絵:フランキー堺

赤埴源蔵【あかばね げんぞう】…呑気キャラ。あかはに げんぞう。

よく赤垣(あかがき)と間違われる。江戸急進派。

明治期の本には「赤垣源蔵、武林唯七とくると、どんな子供衆でもご存知でございます」(青海堂 落語忠臣蔵)と、言ってるくらいの人気キャラ。


義理のお兄さん(塩山伊左衛門)がいて、源蔵はいつも飲んだくれてちょいちょい訪ねるので兄嫁(おまき)はあまりよく思っていない。

討ち入りの日、雪の中を饅頭笠に赤合羽姿で、股の間に一升徳利をぶら下げて(持って歩くのが冷たいから)お兄さんに別れの挨拶に行くが留守で、兄嫁はまた飲んだくれの相手をさせられるのがいやで仮病を使い、床に入って会わない。源蔵は仕方なく対応に出てきた女中のおすぎに言いつけて兄の羽織を持ってこさせ、羽織に向かっていとまごいをする

家の人間に変わって接客する女中のお杉が赤いほっぺのおねえさんで、いつもかわいく演出される。

すぎ「マア。源蔵様、泣いてらっしゃるんですか?」

源蔵「いや、あんまり寒いから目から水っぱなが出た」(or 儂は風邪を引くと目からハナが出るby浪曲。…2016NHK講談大会の神田松鯉先生&2018.12月神田松之丞さんのラジオの公開収録で観た「徳利の別れ」では、師弟揃って女中とのやりとりが少ない重たいバージョンで、ハナのくだりは無かった。)

お兄さんは帰宅後、おすぎから源蔵の様子を聞き、気の毒がる。

夜が明けて討ち入りのさわぎがあり、仙台様の屋敷でメンバーがお粥を食べてると聞き、兄は下男の市助に「わが弟、源蔵たしかにありとおぼえたり!見届けてきてくれ!」とたのむ。実際いたときは大声で吹聴して帰ってこい。いなかったら「おらなかった」と小さな声で報告せよと言いつける。「あんな飲んだくれ、いるわけねえじゃねえか」と文句を言いながら市助が確認に行き、人ごみをこけつまろびつかき分けて確認すると「おお!市助か!」。返り血だらけの源蔵がいた。彼は市助に兄嫁に癪の薬を、兄に槍の柄についていた短冊を形見に渡す。

市助は感動に泣きじゃくりながらおにいさんちに寄っていってくれと懇願するが源蔵はにっこり笑って死にに行く。

噂を聞いた脇坂家が「あやかりたい」と徳利をもらいうけて大切にいたしました。

「徳利の別れ」「名残の徳利」 


落語「赤垣源蔵」では兄の名は柴田伊左衛門(脇坂淡路守の家来)。源蔵がお鍋(と名が変わる)の顔のことを「人一化け九」とからかえば、お鍋は髪を上げるときに使うヒビったけの入ったムサい茶碗をもてなしに出すなどふたりの間柄にギャグ度がパワーアップ。源蔵は羽織ではなく兄の名札に一献。

討ち入りの朝、兄は下男の半助に「わが弟、源蔵がいたらたくさんホメ言葉をかけてくれ。もしいなかったらお前、切腹してはてろっ」

それからめでたく仙台家の門前で二人は出会い、別れる。

※講釈師もしてた五明楼玉輔(2nd)から三遊亭円遊(3rd)が伝授されたとされる講談のバリエーション。


実際はお兄さんはいないし下戸だったとか。

討ち入りのあとの火の始末をしている。


大映ではカツシン。渡辺謙とかあおい輝彦とか、意外に堀部安兵衛よりいい俳優がキャスティングされる(「タケちゃんマン忠臣蔵」では片岡鶴太郎)。


享年35。



野田秀樹主宰だった劇団夢の遊眠社による、赤垣源蔵が主役の1991年のお芝居「目に青葉ヤマホトトギス赤穂浪士」というのもある。

シナリオだけを読んでも特徴豊かな夢の遊眠社のほんとうの魅力までにはたどり着けなかったが、おはなしはイイ具合に荒唐無稽。忠臣蔵物語につきものの正命題vs反命題・的な要素をひねくって、わかりようのないわかりやすさでメタファーの花園にした作品。

主人公が赤垣源蔵とファーブルと蛾の三役をしてることでもわかるとおり、お話し世界がグルグルする。客の前に小出しに出してくる赤穂浪士ネタはというと、ときどき出てくる四十七士メンバーのチョイスとか、仮名手本の抜粋とか、講談のアレンジが意外にソツがなく、原作の野田氏が忠臣蔵に執着があるのか、次元の高いにわか勉強によるプレーなのかが計り知れない。いや、そこが計れたところでなんなのか。ビデオでいいから観てみたい。


加筆)まったく源蔵さんとは無関係だが野田秀樹のしごとには中村勘三郎(18th)の襲名興行の「野田版 研辰の討たれ」(H17)という脚本&演出作品があり、ストーリーライン自体はシンプルなのに野田先生がすごいワード数と演出でせわしなくふくらませ(いや、原作は知らないのだが)、そのものすごいエネルギーに当てられて死ぬ鑑賞者もいるんじゃないかというすさまじいコメディ劇がある。

赤穂浪士の討ち入り成功のころ、その義挙に否定的な刀磨上がりのサムライ・守山辰次と彼を仇とつけ狙う平井九市郎&才次郎兄弟のハナシ。遠巻きな四十七士の討ち入りのアンチテーゼにも感じる。


ともあれ野田先生の脳みそはでかい壁みたいな薬箪笥のようでございます。


関連項目


関連作品