侠客列伝

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東映任侠映画の忠臣蔵。

ポスターにも予告編にも「忠臣蔵」の「ち」の字も書いてないが、あきらかに意識されている。


任侠映画はたいがい「ガマン〜殴りこみ」というのが定番なイメージだからどれもこれも「忠臣蔵っぽい」と言えるのでは、と思っちゃうかもだが意外にこのシリーズはバリエーションは豊かなようで、特に本作は「迫害〜刃傷〜営業停止〜メンバー脱盟〜破門メンバーの帰参〜殴り込み」というかんじが堂々と忠臣蔵。また、あちこちのシリーズの人気俳優陣が一堂に会してる「オールスター」ぶりも「忠臣蔵」なかんじ。

(もっとも約10年のあいだに100本以上作られてる路線の中で、もりいは『網走番外地(も、そうか?)』『昭和残侠伝』『昭和残侠伝 死んで貰います』くらいしか観ていない。てへぺろ)


明治40年の漁港を舞台に新法のもとでとまどう侠客らの物語だが、じゃっかん相関関係のスケールもでかく一家だ親分衆だ網元だ団体だいろんな地名や苗字が106分の中に詰まってて、うっかりすると混乱。


権力になめられっぱなしをグッと我慢する侠客・高倉健(大石内蔵助的やくわり)をけしかける地元のカゴ屋に藤山寛美が出ていて、脇役で出番もほとんど無いのだが、その場をさらう存在感がすごい。

「顔を見ただけでも虫酸が走るんじゃ!それでも侠客か!……おこ、怒ってえな。な。怒ってえな!」

これ、ベタといえばベタなシチュエーションだが(村上喜剣のエピソードが近い)、ドスを効かせてたかと思ったらのぞかせるやさしい一面に、オジチャンの中にオバチャンが同居しているような風味が、なんていうか寛美のベースにある独特の泥臭い(<いい意味で)ルーレットの円盤の上でコロコロと自在に現れては消えて、ちょっぴりでも濃い満足感を与えてくれる。たいへんな負債を抱えて自己破産し、松竹新喜劇を追われたあとの彼であるが苦役は役者を伸ばすんでしょうかな。


渡世の義理で健さんと闘わなきゃいけなくなった清水一学的なキャラに鶴田浩二。


破門された若山富三郎が不破数右衛門ばりに登場するが、頼もしいしユーモラス。


昭和43年(1968年)。マキノ雅弘作品